どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

目標設定の極意

 若い職員に、目標を教えてくださいと訊かれたことがあり、「現状維持」と応えたことがある。今も、その答えは変わらない。現状維持をするためには、変化を起こし続ける必要があると思っているけれど、そのことを付け加えたかどうかは定かではない。職員に、変化が激しすぎると言われたこともあり、それも私にとっては、現状を維持するために必要なことで、その時は、職員にも伝えた。

 そんなわけで、私は目標設定とかに今は興味がないのだけど、Numberの表紙がイチローだということで、Numberを購入し読んでいる。

 イチローは、「目標」という言葉について、「自らを高めていくために不可欠なものと捉えています。基本的には遠くに設定するものと、近くに設定するものの2つがあり、日々意識するのは近くにある目標で、それをクリアしていくことで遠くにある目標に近づいていく、そんなイメージです。これってよく耳にする話ですよね。でもやってみると結構難しいんですよ。ひとつ言えるのは、遠くの目標だけを見ているといずれは挫折します。難しいけど頑張ればできる距離感を大事に、僕は形にしてきました。」と答えている。

 私の場合は、目標を設定しているわけではないけれど、その時の自分の状態に応じて、自分自身にかける言葉を変えてはいる。私は、それを遠目と近目と呼んでいて、遠くを見ていて楽になることもあれば、足元の近くを見ているほうが楽な時もある。と、書いていて、基本は、自分に甘いのではないだろうかという気もしてきた。いや、甘いのは自覚している。甘くて良いのではないか、とも。

 ここ最近、ある職員のことを考えていて、その職員が、何度となく心が折るのは、目標設定が遠いからなのではないか、とイチローの言葉を何度か読んでいるうちに思うに至る。今度、提案してみよう。

 イチローへのインタビューは続く。今の高校生はどんな目標設定を提示すれば前へ進めると思いますかという問いに、「.(中略)。年々、厳しい指導ができなくなっているということ。実際、監督に話を聞くと以前にも増してその傾向は強く、萎縮してしまっているというんです。...多くの人が『時代だから』と枕詞のように表現する昨今ですが、果たしてその時は穏やかに見える時間を過ごしたところで、社会に出てからの耐性は育めるのでしょうか。(中略)。今の環境では甘えが出てしまうから、厳しさが必要だということは多くの子どもが理解しているんです。(中略)。高校生たちには『もっと厳しくしてほしい』という想いが潜在的に眠っているように感じます。それをくすぐるのも僕の役目。眠っているんものが目覚めるきっかけになればいいですね」

 高校生はどうすれば自分に厳しくなれるのでしょう。イチロー曰く、「だから、日々、自分の限界を迎えることが大事なんです。人と比較して『アイツよりも頑張った、頑張っていない』じゃ、基準がバラバラでわかりにくい。そもそも人の頑張りは秤にならない。秤にするのはその日の自分がいいんです。『あと一本走らなきゃいけないけど、もう今日はつらいし明日にしよう』ってこと、きっと多いです。そこでもうひと踏ん張りできたかどうかは、人にはわからないけど、自分にだけははっきりとわかる。人の力を借りず、自分でそこを超えていくのが大事なのはわかっているのに、行動するのは実はとても厳しいんです」

 再び、ある職員のことを考える。イチローのいう秤が、他者にあるから苦しくなるというのは、私から見ると、わかるのだが、果たして、本人が自分でその答えを導き出していくために、私は、どんな言葉をかけるのが良いのだろう、と考えている。