どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

異国で迷子

 午前11時頃、車を運転していると、歩道を歩くパキスタン人の小さな女の子が、手を挙げたようにも見えた。何か、助けを求めているようにも感じたが、反対車線だったから、一度は、そのまま通り過ぎ、バックミラーで、その女の子を追った。女の子は車道に出て、車を止めようとしているようにも見え、やっぱり、何か困っているんだ、と引き返した。

 女の子は、一台の車を止めることができたようだったが、しばらくして、その車は、そのまま行ってしまった。私はスーパーの駐車場に車を停め、女の子のところに歩いていった。何か困ってるの?と声をかけると、女の子は泣いていて、答えてくれない。日本語が通じないようだ。女の子は、私の車のところで止まり、車に乗せて欲しいようだったので、乗っていいよ、とドアを開け、どこに連れて行って欲しいの?小学校?と聞くと、頷いた。頷いているが、本当かどうかが微妙で、職場に英語が話せる職員がいたのを思い出して、女の子に、会社に寄るね、と伝え(伝わっていないが)、会社について、玄関で電話をし、英語が話せる職員に来てもらった。だが、英語で話しても通じず、とりあえず、小学校に向かい、建物の前で、ここ?と尋ねると、女の子は、首を振る。幼稚園なのかな、と今度は幼稚園に向かい、建物の前で、ここ?と尋ねるも、女の子は、首を振る。

 途方に暮れていたところで、後部座席に女の子と一緒に座っていた職員が、この鞄って、この女の子のですか?と私に訊く。鞄の中に、住所が書かれているものがありませんかね、と呟き、女の子に鞄を開けても良いか尋ねる。私も鞄を注視する。鞄の中からは生活という教科書が出てきて、どこの小学校に通っているかわかり、その中にはプリントもあって、プリントには、学校の電話番号も書かれていたので、学校に電話をかけ、これから向かうと伝えた。

 小学校の登校時間は、8時台だから、スクールバスを3時間ほど待っていたけど、一向に来なかったから、途方に暮れて歩いたのだろう。もしかしたら、今年の4月から、日本の小学校に通うようになったかもしれない。

 学校に近づくと、先生なのか、事務職員なのかはわからぬが、外で出迎えてくれて、その女の子の名前を知っているようだった。女の子は、暗い表情で車を降りた。先生と思しき大人は、私たちにお礼を伝えるよう女の子に伝えるが、女の子は、俯くまま。私は、お礼は良いよ、とにかく、よかったね、じゃあね、と別れた。

 私は、携帯電話でパキスタンの位置を確認した。ネパールがインドに隣接していることは知っていたが、パキスタンもなんだ、と初めて知った。本当のところ、その女の子がパキスタン人かどうかはわからない。スカーフをし、腕にはアクセサリーと呼べば良いのか、オシャレだな、と思った。また、どこかで会うことができたら良いな。