長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』を読み終わった後、もしかしたら、あの人も、HSPだったのではないだろうか、と考えていた。
HSP(Highly Sensitive Person ハイリー・センシティブ・パーソン)というのは、今から約20年前に、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が発表された概念です。その名のとおり、生まれつきとても敏感な感覚、感受性を持った人たちのことをいいます。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p4
HSPの子どもをHSC(Higly Sensitive Child ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ぶそうで、5人に1人と言われている。5人に1人といえば、40人クラスの場合、8人いるということになる。そう考えると、私が気づいていなかっただけで、出会っていたのだろう。今もなお、職場には、そんな人たちがいるからもしれない。言葉を変えれば、繊細だったり、神経質だったり、という表現をされているかもしれない。であるならば、私は、その人たちが、力を発揮できる環境をどう用意することができるのだろうか、と考えている。
HSCというのは、この不安の回路がとても強い子たちだと私は考えています。不安の回路がつねに強く働いているため、マイナス思考が強くなりやすいということが言えると思います。(中略)
大事なのはバランスです。不安の回路が回りっぱなしになっている子には、やる気の回路が必要です。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p49−50
感覚統合療法的視点は、神経発達症の子どもの理解のためにはとても優れています。ただし、それ以外の感覚の問題もあることを考えることが大事なのです。
HSCのように、感覚の統合がうまくいかないのではなく、過剰な感覚刺激に圧倒されたり、疲れきったりしている子にとっては、入ってくる情報を減らし、一人で静かに過ごせる空間や時間をつくってあげることこそが大事なのです。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p61
敏感さを考えるときには、色々な要素を考える必要があります。持って生まれた気質もある。家族関係の影響もあります。愛着障がいやトラウマ、心の傷が絡んでいることも多いのです。また、神経発達症が関係していることもあります。ですから、何が敏感さを生んでいるのか、精神的な問題として多面的に見なければなりません。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p78
敏感さは、愛着障害やトラウマも関係するというのは耳にしたことがあり、もっと理解する必要があると思っていた。
外では、他人からいろいろなことを言われたり、されたりします。相手にはその気がなくても、受け止め方によってどんなことでもストレスになり得ます。そのとき、「イヤだ」とは「違う」とか「やめてほしい」と感じても、その感情を相手にストレートに返せないのが、内弁慶タイプです。(中略)
この三角形には「自分が自分に対して」という矢印があります。ここが重要です。お母さんにぶちまける前に、もうひとステップあるのです。表の自分(体)がやられたことを裏の自分(心)に対してしてしまう。(中略)
内弁慶というのは、外で感情を出せていないということですから、見逃してはならないサインだと思います。
それでも、どこにも出せないよりは、そんなかたちでも吐き出せているだけまだいいのです。これが、家庭にも吐き出せる場がないとなると、ひたすら自分の中に溜め込んでしまうしかなくなってしまいます。これでは心が行き場を失ってしまいます。
人間関係のトラブルの原因について、この三角形でいろいろ考えることができます。
学校でいじめられているとか、家で親から虐待を受けている子どは、自分がやられるつらさを味わっているのだから、人にはひどいことをしないかというと、そうではないのです。自分で自分にダメ出しをし、堪えきれなくなると、ストレスの矛先が自分より弱い人に向かっていってしまいます。被害を受けている子が加害者になっていく。そういう連鎖が起きてしまうこともあるのです。
では、この三角形の負のサイクルを断ち切るには、どうしたらいいのでしょうか。
まず、「自分が自分に対して」攻撃してしまうのを止めることです。自分で自分を責めないようにすることです。(中略)
自分で自分を責める回路に入ってしまわないようにするわけです。
それには、普段から自分の本音を大切にする習慣を持ち、自分が「こんなことをしたい」「あんなことをしたい」という本音を出しやすい環境にいることです。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p163-167
許す、許さないと言っているから泥沼にはまってしまうのです。そういうものなんだと受け入れるだけでいい。それだけで人間関係は変わっていきます。
多くの人が価値観に縛られて、言うには言えない姿があります。弱さを出せない。でも、弱さを出していいんだと言うようにするには、「これでいいんだ」という気持ちが、どうしても必要なのです。
でも、「これでいい」という気持ちは、どうやったらできるのでしょう。安心・安全な場で自分を出すことはたしかにできます。でも、世の中は安心・安全な場だけではありません。そういう場で、どうやったら自分を出せるようになるのでしょうか。
「これでいい」というのが根本にないと自分を出せません。「もういい」と思えるようになることで、自分の縛りを解くことができるのです。
マイナス思考になりがちな人は、なかなか「これでいい」と思えないのです。真面目に考えすぎるからです。自分を責めて、責めて、「こんな自分、ダメだ」としょげているのです。だからこそ、「それでいいんだよ」という発想の転換が大事なのです。
誰もがみな、自分の中にある特性を引き受けて生きていかなければなりません。否定したり、消したりすることはできないのです。
本来のものを「消す」のではなくて、「それはそれでしょうがない」「もう、いいよね」と、自分のそういう性質と付き合っていく心が前を持つ方がいいと思います。無理やり消さなくていい、そのままでいいのです。(中略)
そういう人たちを助けるには、理解して手を差し伸べて支えてあげる人、場所、時間、空間、そういうものが必要です。
長沼陸雄『子どもの敏感さに困ったら読む本:児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』p187
癖には、思考回路にもある。癖を治すためには、意識的になること。訓練といってもいい。
佐藤優が言っていた内在的論理も思い出した。相手の行動原理を理解しないと、軋轢を深めてしまうだけ。
弱さを公開できる組織を作るために心理的安全性が必要だとわかっていたけれど、それをどう実現すれば良いかがわからなかったが、個々人が、自分自身をこれで良いと思えることが大切だということなのか。そう思えるために、私は、まずは、そのままで良いというメッセージを発信する必要があるということなのか。