どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

兄妹喧嘩

 寝ぼけ眼で、IPadの電源をつけ、プロ野球スピリッツAのアプリを開いた。現在のイベントでもらえるOB第2弾Sランク契約書を手にした。狙いは、ただ、一人、巨人の高橋由伸。Sランク契約書を開封。投手が投げる。バッターが、バットに当てた。自チーム確定の演出である。滅多に出ないし、出るとも思っていないから、脳内には、よくわからない物質が出ていたのではないだろうか。まるで、パチンコで当たりが確定した時のようだった。私の自チームは、巨人。つまりは、高橋由伸が確定した。

 高橋由伸をゲットして、二度寝をし、8時前に再び起きて、妻とモーニングに行こうということになった。雑誌を読みながら二軒の店で迷い、その一軒に行くことにした。

 まもなく到着するという段になり、妻が雑誌を見ながら、月曜日は休みだ、と言った。じゃあ、もう一軒の店に行こうと、私が言い、妻はGoogleマップでナビをし、駐車場に車を停め歩いた。螺旋階段を登り、喫茶店の店内に入ると、女性店員が、調理場から出てきて、ホテルの宿泊者のみで、ホテルの宿泊者以外は11時開店だと申し訳なさそうに言った。これで、私たちの行きたいと思っていた喫茶店はなくなった。螺旋階段を降り、駐車場のほうに歩いた。ホテルの宿泊者のみなら、それはモーニングと言わないよね、と妻は言い、Googleマップで喫茶店を探した。

 着いたのは、昔ながらの喫茶店で、店内には、誰もいなかった。モーニングを注文し、私は持参した高塚健太郎『詩については、人は沈黙しなければならない』を開いた。

 まもなくして、年配の女性が店内に入ってきて、店主と挨拶を交わした。常連らしかった。女性が、煙草に火をつけるために、ライターを出した。女性に目をやると、女性は読書をしていた。コーヒーを飲みながら、読書をし、そして、タバコを吸い、思索にふける。なんて、素敵な時間の過ごし方なんだ、と思ったが、私たちも、同じような時間を過ごしていた。

 昼には自宅に帰ってきて、古賀及子『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』を読んだり、プロ野球スピリッツAをしたりとダラダラと過ごし、夕方になると、珍しく、私は台所に立った。豚汁を作るためである。理想の豚汁を作るため。理想といっても、すき家だったり、びっくりドンキーで飲むことができるあの豚汁を作ろうと思っている。油揚げを切ったところで、妻が部屋から出てきて、勝手に始めないで、と言った。勝手に始めないでって、酷いよね、と返したが、私は豚汁を作ることが初めてで、わからなくなったら、妻に声をかけようと思っていたので、ちょうど良い搭乗といえば、登場だった。

 今後、私は、理想の豚汁をいつでも作ることができる。夕飯の後は、再び、古賀及子『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』の続きを読んだ。

 兄妹が、一つのプリンをめぐり、半分に分けて食べるか、はたまた、じゃんけんで勝った者が独り占めするか、それとも、争いは避け、母に譲るか、という話があった。私の子どもの頃と同じだと思った。私たち兄妹は、毎回、半分に分けて食べていた。本では、じゃんけんをしようとなり、兄がじゃんけんに勝った。妹は、「ひとくちちょうだいよ!」と、でかい声を出した。「ひとくちやりな」と母も息子に言うと、妹は、「焼けているとこだよ!表面の!」と言った。私は吹き出しそうになった。プリンの底にあるカラメルというのか、焦茶色の液体のところを食べたいというのならまだしも、焼けているところ食べたいかな、と思った。