どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

おおきなきりかぶ

 自宅アパートの出入口付近には、時々、焼肉の匂いが流れてくる。アパートから徒歩1分のところに、地元住民が通うであろう店構えの焼肉店がある。外観からは、お客さんが入っているようには見えず、そもそも外から店内の様子を伺えない。ただ、流れてくる匂いが、おいしそうだから、妻を誘い、足を運んだ。外観とは、打って変わり、店内は、活気で満ちていた。申し訳なさそうに、おかみさんが、満席なんです、と頭を下げる。後日、二度目に足を運んだ際も満席。再び、おかみさんは、満席なんです、と頭を下げた。バレンタインデー、当日、三度目の正直にすべく、私は予約をすることにした。電話をしたら、お店の人は電話に出ない。Googleマップ上では営業中になっているが、何度かけても電話に出ない。出てくれない。定休日なのか、臨時休業なのか、二度あることは三度ある。私は、未だに、その店の焼肉の味を知らない。

 引っ越しをして3ヶ月、自宅近くに、どのような店があるのかは、なんとなく把握できた。焼肉がだめなら、寿司にしようと、前から気になっていた寿司屋まで車を走らせること10分。コインパーキングに車を止めるために脇道に入る。入った瞬間、まずいと思ったが、時すでに遅し。雪の轍で、スリップ。車を降りて状況を確認していた私に、ついさっきも、スリップをしていた車がいたと50代男性が声をかけくれ、一緒に、車を押してくれるが、出る気配なし。すると、今度は、ついさっき、スリップしていたという30代男性が、牽引ロープを持ち、私の元に駆けつけてくれる。ありがとうございます、助かりました、ありがとうございました、としつこいぐらいに、皆さんに頭を下げ、寿司屋に無事、たどりつける。

 メニューには、創作寿司の文字。私が、これまでで一番好きな寿司屋も、創作寿司を提供する店だった。シャリは、赤酢と白酢をブレンドしているもので、見た目もおいしそう。というか、おいしい。ポテトサラダは、とびっことたくあんが混ざっており、これまた、ここでしか食べられない味。怪我の巧妙といいますか、こうして、近所に行きつけができるのが嬉しい。