どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

妄想

 職場の後輩が、お忙しいですか、と申し訳なさそうに私に声をかけてきた。忙しいけど、良いよ、と私が答えると、その後輩は、『ルックバック』ってマンガ知ってますか?と訊いてきた。漫画家を目指すマンガだよね。読んだことあるよ、と私が返すと、堰を切ったかのように、『ルックバック』について語り始めた。そんなに深読みするんだ、と言うくらいに。同じ著者で、『さよなら絵梨』もおもしろいです、と言うので、読んでみるよと私は返し自宅に帰ってきて購入した。

 後輩は『ルックバック』を電子書籍で購入した後、あまりにもよくて、書籍でも購入したと言っていたが、確かに、手元に置いておきたくなるような作品で、二度目も初めて読んだときと同じような感動が押し寄せてきた。

 『さよなら絵梨』は、高校生が映画を作るという物語で、映画を撮る上で、ファンタジーをひとつまみいれるという料理でいう調味料的な話が印象的で、そうか、私が書くこの日記にも、妄想をひとつまみいれるのおもしろそうだな、と思った。現実と妄想が読み手側からしたらわからない、、、と考えたらおもしろそうで、試したくなった。

 次の日は、一年に数回あるかないかの土曜日が休日の日で、当初の予定では、妻と、うに祭りという我が家唯一の季節行事に行く予定であったが、前日、予約の電話をしたら、満席だということで、うに祭りは延期となり、葛西由香個展「ままならぬまま」を観に行くことにした。

 ギャラリー門馬に、行くのは初めてで、立派というか、綺麗というか、想像以上のギャラリーで、あんなギャラリーを運営してるの羨ましいなあ、と思って、帰りの車の中で、金持ちになりてえ、と呟いた。ギャラリーの2階には私の蔵書を置こう。

 葛西さんを知ってから、作品展があるたびに足を運んでいる。会場にあった葛西さんのメッセージを写真に撮りたくなった。

 ”うまく行かないことがあって、生きづらさを感じていても、明日は来るし、生きていくしかない。じっと耐え、時に憂うつを笑いながら、身をかわすように毎日をこなしていく”

 いつだったかの作品展に、作品と並んでいたエッセイのような文章も良くて、絵もさることながら、言葉ももっと読みたいと思っている。

 ギャラリーに入ってすぐの本棚には、葛西さんお気に入りの絵本、短歌集、辞典が置いてあって、読みたくなって、その日、蔦屋書店に行き、萩原慎一郎『滑走路』を買って帰ってきて、蔦屋書店にはなかった野澤幸司『妄想国語辞典』を注文した。あっ、ここにも妄想ってキーワードが出てきたと思った。  

 

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