どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

熱狂

 アパートの玄関ドアが開きづらいほどに、雪が積もっていた。ゴミ袋を抱えて外に出ると、長靴を超えて雪がズボンにまとわりついた。雪はいつから降り続いているのか、今もなお、深々と降り続けている。

 休みだし、雪はねは後にしようと、佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』の続きを読んだ。一言で言えば、コミュニティに関する本だ。人と人のつながりに興味があるし、会社というコミュニティを思い起こしながら読んだ。

 教育の呪いを解くのは、頭で理解するよりもずっと難しい。細部にまで習慣として入り込んでしまっている。佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』p38

 学生までの勉強と社会人になってからの勉強は、頭の使い方が違うのではないかと思う。社会人になってからの勉強とは、勉強ではなく、学びが必要である。学びとは、自分で課題やテーマを見つけ、掘り下げていくということ。学生の頃までの暗記は、社会人においては必要がない。知りたい情報へのアクセスが必要であるから。

 熱狂→拡大→熱狂を繰り返すと、どこかで破綻する。そうではなくて、安全・安心の確保→熱狂→拡大→安全・安心の確保を繰り返すのが重要だ。大事なのが、内容よりも順番だと気づいたとき、コミュニティマネージャーの仕事は、かぎりなく編集の仕事に似ていて、編集者ができることだと思った。編集とはどんな仕事か?究極的にシンプルにいうと「集めて・削って・並べ替えて・補足する」、この4つの作業を延々と繰り返して、情報を伝えやすくする行為だ。コミュニティに対しても、この4つを繰り返すことが重要だ。佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』p165-166

 安心・安全というキーワードが登場したときに、以前、読んだ岡壇『生き心地の良い町』を思い出した。自殺率が低い町の研究が、本になったもので、安心・安全がキーワードになっていたよなあ、と以前に書いたブログを読み直した。読み直して、自殺予防因子と考えられるのは五つあり、①いろんな人がいてもよい。いろんな人がいたほうが良い、②人物本位主義を貫く、③どうせ人なんて、と考えない、④「病」は市に出せ、⑤ゆるやかにつながるだった。人物本位主義って何だったんだろう?と、人物本意主義と検索してみると、学歴、容姿、財産、血筋などは問わないこととあり、そう考えると、人を見る時って、学歴も、容姿は、その人を見る上で無意識に見ているよなあ、と思った。私は、町だとか、ファンコミュニティとかよりも、会社の一つの部署で考えるのがわかりやすいので、そうしているのだが、①のいろんな人がいても良い。いろんな人がいたほうが良い、という考えは、普段から所属部署で、私が話していることであり、もしかしたら、この本を読んでから、発信する言葉になったような気もしないでもないなあ、と思っている。

 自己紹介とは、ある意味、自分の物語を相手に聞かせることだ。自分のことなど、相手が興味を持たないはずというのは、一見謙虚なようで、実はコミュニティにおいては自分勝手な行動だ。自分がどんな人間かを紹介するのは、自己アピールではなく、その場にいるメンバーの安心のためだからだ。・・・略。コルクラボのメンバーに面白い自己紹介の仕方を教えてもらった。Doの肩書ではなく、Beの肩書で自己紹介をするのだ。就職活動のときの履歴書は、何をできるのか、Doを書く。そうではなく、何が好きなのか?何をしたいのか?を語る。・・・略。他の人が自分を理解できるように、自分の物語を繰り返し語る。それは、安全・安心を生み出すきっかけを作り、コミュニティに貢献する行為だ。それだけでなく、自分で自分を深く知ることは、自分をモチベートする唯一の手段でもある。佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』p198-200

 価値観レベルの会話が大事というのを、ピョートル・フェリクス・グチパチ『世界最高のチーム グーグル流「最小の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』を知り、今年度が始まって、すぐに所属部署で導入した。なぜ、就職したか?どんな人でありたいか?など。来年度は、Beの自己紹介ができる場を考えよう。人事異動があればだが。いや、現メンバーでももっと知る必要があるか。こう振り返っていくと、やはり、今年度、どうでも良い会話というか、たわいもない会話が不足していたということに気づく。コロナのせいではあるけれど、どうでも良い会話やたわいもない会話が大切だと思っていたならば、何か、方策を考えられたはずだ。

 ・・・「とにかくうごけ。動かないやつは来るな」というメッセージから「本業が忙しい人は無理のない範囲で活動すればいいよ」というメッセージに変えたりした、すると、かえってメンバーが自走して、「これやってもいいですか?」と提案がどんどん挙がってくるようになった。佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』p232

 安心・安全を確保するとコミュニティは自走するという例で書かれたところで、部下に自立して欲しいと思っているなら、まずは安心・安全を確保することということかもしれないと思ったり、安心・安全が大切だということはわかっていて、意識していたけれど、具体的にどのようにすれば良いかという自分の手札が少ないような気もした。

 熱狂とは「成長することか、成長を見守ること」で生じます。佐渡島康平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』p230

 私たちの部署は、ここ数年で、一気に成長をした。そして、今、緩やかになった感がある。これは本書でもあるこれは静かなる熱狂になるのか、はたまた部下たちは熱狂から覚めた状態になるのか。安心・安全はずっと大切にしてきたけれど、今後、熱狂についても考えていきたい。