どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

メモリークエスト

 ここのところ、大学生に向けて話をする機会があり、懇親会があったので、懇親会にも出席したのだが、その時に出会った学生の一人が、魅力的だったなと思い出している。

 初めは友達のような距離感で、言葉遣いも、馴れ馴れしいと感じたのだが、話していると、初めて会ったのに、すぐに仲良くなれた感があり、もっと、話してみたいと思った。初対面の人にも、物怖じをしない性格なのだろうか、生育歴によるところなのか、アルバイトで初対面の人と話をする機会が多いからだろうか。

 私が若かりし頃は、初対面の人と話をするのが苦手で、できれば、そのような飲み会には参加したくないと思っていた。だから、初対面の人とも、すぐ仲良くなれる人が羨ましかった。別に友達を増やしたいとは思わないが、また、この人と会ってみたいとか、この人に会えて良かったとは思ってもらいたい。

 私が大学生の時、インドに一人旅に行った。

 今、思えば、無謀な旅で、今は、そんな旅は、できそうにもない。

 バナーラスという街で、ガンジス河の畔にある宿に宿泊した。その宿に決めたのは、日本人の女性が営んでいる宿で、日本人が多く集まる宿だったから。ドミトリータイプで、見知らぬ男女が、一つの部屋に寝泊まりする。私が宿泊した同じ日に、日本人女性2人も宿泊した。2人とも大学生で、名前を、ゆきちゃんとみなちゃんと言った。

 数日後、私は、強烈な吐き気と、下痢に見舞われる。自分の症状を英語で伝えることが難しく、みなちゃんに、薬局に一緒についてきてもらい通訳してもらったり、ゆきちゃんに、切符の買い直しや、食事を買ってきてもらったりと、二人に看病をしてもらったおかげで、体調も回復した。

 バナーラスをあとにするその日には、みなちゃんが駅まで見送りをしてくれた。

 歩きながら、また、会いたくなったら、バラ色の珍生(会いたい人を探してくれるテレビ番組)で、探してもらうわ、と冗談で言ったが、あれから20数年経った今、またしく、そんな気持ちになっており、時々、会いたいなと思い出している。会いたいが、ゆきちゃん、みなちゃんというあだ名しか知らず、出身大学くらいしか知らない。

 インドで出会った人たちの何人かは、そんな出会い方をした。フルネームで聞いていた人をfacebookで探してもみたが、見つからなかった。私も、大学で住んでいた町と、今、住んでいる町も違う。

 高野秀行『メモリーエスト』を読みながら、その気持ちが、また沸々と湧き起こってきた。まさしく、私みたいな状況にある人の人探しをしてくれるという内容の本。

 日本だけで探すのも難しいのに、その捜索範囲が、世界中。探すことができたかは、本書を読んでもらった方が良いと思うので、ここでは書かないが、私も高野さんにお願いしたくなった。私が、会いたいと思っているその人たちは、私のことすら忘れているかもしれないが、会うことができたら、旧知の仲になれる気がする。