どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

センチメンタルリーディングダイアリー

 妙蓮寺駅から東横線に乗り、ホテル近くの駅である新宿3丁目に向かった。

 本屋・生活綴方で購入した@osenti _kenzo _lovinson『センチメンタルリーディングダイアリー』を開いた。開いてすぐに、この本は、私の好きなやつだ、と思った。なぜなら、一発目に、桜井鈴茂『できそこないの世界でおれたちは』が紹介されていたから。桜井鈴茂さんは、私の好きな作家の一人だった。

 『センチメンタルリーディングダイアリー』を読み進めると、桜井鈴茂さんの本が数冊紹介されていた。『センチメンタルリーディングダイアリー』は、読書の記録と、読書をしながら著者が思い出したエピソードが綴られる本だった。

 こういうのをセンチメンタルというのね。センチメンタルをネットで調べると、悲哀や憂愁などにひたるさま。涙もろいさま。感傷的。また、そういう感情にひたるさま、とあった。

 私のストライクゾーンは、センチメンタルだったのだと言語化された。センチメンタルの最たるものが恋愛であるなら、恋愛小説は、私のストライクゾーンということになる。私は、これまで、好んで恋愛小説を読んでこなかったから、ストライクゾーンにある本は、まだまだ世の中に埋もれていることになり、『センチメンタルリーディングダイアリー』で紹介される本は、かなりの確率で、おもしろい、と思う本ばかりなのではないか。というか、私も、『センチメンタルリーディングダイアリー』のように、文章を綴りたいと。

 ホテルに荷物を置き、『センチメンタルリーディングダイアリー』を持参し、fuzkueに向かった。fuzkue初台店に行くのは、これで2回目だった。伊野尾書店のある中井や、本屋・生活綴方がある妙蓮寺と同じく、初台も、私の好きな空気を纏っている商店街だ。

 その日は、予定もなかったので、夕飯もfuzkueで食べ、何時まででもいようと店内に入り、開いていたソファ席に座った。

 ソファとソファの間隔、本棚の配置、照明の明るさ、静かな空間。改めて、本好きのための、読書をするために用意された最高の空間。

 アイスコーヒーを注文し、『センチメンタルリーディングダイアリー』を開く。疲れたら、本を置き、外の空気を吸い、そろそろ夕飯の時間だなとチキンカレーを注文する。時間は気にしない。ただ、読書をしているだけなのに、贅沢この上ない。

 時間を気にせず、読書に没入して、どれくらいの時間が経つのだろう、と携帯電話で時間を確認すると、まもなく4時間になる。

 店内には、カウンターに丸眼鏡をかけた女性が一人だけになっていた。

 ここで、女性が店をあとにすると、私一人だけになり、そうなると、そろそろ帰ったほうが良いかなという気持ちになるような気がするな、と頭をよぎる。ということは、あの女性にとっても同じことだから、私は、あの女性よりも店をあとにしよう。そもそも女性は、そんなことを考えているはずがない、と頁をめくっているところに、もう一人男性が入店し、私のごっこ遊びのようなゲームは終了し、4時間ちょうどで、店をあとにした。

 fuzkueは、こんな時間の過ごし方が良い。