北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

世の中は広い。

楽しみにしていた戌井昭人『壺の中にはなにもない』を読もうと、ダンボールの中に手を伸ばした。と、同時に嫌な予感がした。

 

ダンボールの底に張りついていた粘着剤といえば良いのか、なんと呼ぶべきなのか、本が、ダンボールと、くっついていた。

 

ああぁ、と声を出したのか、心の中で呟いたのか定かではないが、読む前に、新品の本の背表紙が破れてしまって、げんなりした。

 

とはいうものの、『壺の中にはなにもない』は、戌井昭人ワールド全開で、満足して読み終わった。

 

読み終わったあと、主人公の勝田繁太郎は、どこか『寅さん』みたいだな、と思った。男はつらいよの寅さんである。

 

寅さんとの違いは、寅さんのように破天荒ではない。勝田繁太郎は、野暮といえば良いのか、要領が悪いというか、そんな男である。友達という友達もいない。だけど、勝田繁太郎は、友達がいなかろうが、周りから使えないと思われようが気にしない。マイペースを貫こうという気すらもない。

 

勝田繁太郎は金持ちの息子である。金持ちの息子というのが、ポイントなのではないか、と思う。

 

私だったら、親の期待に答えなければと思って生きているかもしれない。見た目というか周りの評価を気にしすぎるほど気にして生きているのかもしれない。特に20代の頃は、自分がすごいわけではなく、祖父がすごいだけなのに、あたかも自分がすごいと錯覚というか勘違いをしているかもしれない。

 

そう考えると、勝田繁太郎のあの態度は、すごいのではないか、ということになる。

 

では、どこが男はつらいよをかというと、たぶん物語の中盤から後半部分である。男はつらいよには、必ず素敵なヒロインが登場する。『壺の中にはなにもない』にも、素敵なヒロインが登場する。

 

『壺の中にはなにもない』のあと、何冊か手にとって数ページ読むが、集中力が続かない。それも『壺の中にはなにもない』が、おもしろかったからだと思っている。

 

ここのところの休みは、当たり前のように、自宅で過ごし、昼寝をしたり、読書をしたりして過ごす。夜は、日本シリーズを観ている。

 

第3戦目の本日は、巨人がサンチェス投手が先発だった。

 

サンチェスという投手がいるのは知っていたが、投げている姿を見るのは、今日が初めてで、マウンドに立つ表情だったり、降板したあと、ベンチで高梨投手に声をかけている姿を見て、好きになった。来シーズンも契約しているのかはわからないが、ぜひ、活躍してもらいたい。サンチェスの笑顔を見たいと思った。

 

それにしても、このままあっけなく幕を閉じてもらいたくない。

 

 

壺の中にはなにもない

壺の中にはなにもない