どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

市長になる男


「俺は政治家になりたいんだ」


あれは俺達が18か9歳の頃。
友達が俺に語った夢。


俺は呆気にとられた。
当時の俺には思いもしなかった夢。政治家。
そいつが、本気で言っているということはわかった。
だから、俺はずっと忘れていなかった。


あれから10年。
試される大地、北海道のとある町で、そいつはあいかわらず、その夢を追いかけている。


この前、北海道に帰った時にも、少しだけその夢の続きを聞いた。

「この前、会った時、話した俺の提案が採用されて、動き出してる」と黙々と語り始め、
「今度は、こういうことがやりてぇんだ」と熱く語る。


その男は、一段、一段、自分の夢の階段を登っている。


「俺は小さい所でやりたいんだ。だから、市長か知事になりたい」


俺は確信に似たものを感じた。
「こいつは、市長になるな」って。

なぜ、そこまで政治家になりたいかはわからない。
いつも、その発想、提案していることを聞くのが、おもしろくて、なんでなりたいかは聞いていなかった。
なんで、あいつはそこまで政治家になりたいんだろう。
今更になって思う。


俺達が生まれた北海道。
俺達が育った北海道。
ある友達は「この街を盛り上げてぇんだ」とフリーペーパーを作り、
その友達は「俺は市長になりてぇんだ」と今できる町おこしをその町で提案している。
形は違えど、北海道を想う気持ちは変わらない。

日々の業務に流されない志の高さ。
提案しろと言われているかは定かではないが、志の高さがなけりゃあ、そんな発想、提案なんかできない。
聞いている俺がわかる。
世界が違えど、そんな志の高さは俺にとっても大切なことは同じ。


俺は年が若かろうがやりたいことはその時にやっちまえ派。
年をとったら、違うことがやりたくなるかもしれない。
だから、その時、その時にやっちまえ派。
俺等は、すでに舞台に立っている。
いつか、いつかって思っていたら、その舞台の幕が降りちまう。
だから友達に「今、立候補しろよ」と言ってみた。
その友達は、「長になる人は、周りから求められると思っている」と静かに答えた。

まあ、俺がそんなことを言おうが言うまいが、
自分のペースで、自分のスタイルで、
さらに自分の夢の階段を登っていくのだろう。


どれくらい先かはわからないけれど、北海道のとある活気づいた街の市長の名は、たぶんそいつの名だ。