どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

ファン

 ホームランを打つ夢は、どんな意味があるのだろうか、と携帯電話で夢占いを調べた。運気が上昇するとのことだった。ホームランを打ちたいという夢を見たのは高校球児の時で、夢ですらホームランを打ったことがなかったのに、先日、夢の中でホームランを打った。ファールになるかな、と思った打球は、ポールギリギリでスタンドに飛び込んだ。これで3本目だなと思いながら、ダイヤモンドを回った。

 そんな夢を見た日の仕事は、部下との面談をする日だった。最近の考えていることを教えてください、と部下に訊かれた。面談をするたびに、最近の考えていることを訊かせて欲しいと訊かれるので、今回は用意していた。2つあるんだけど、と私は話し始めた。

 その一つが、阿久津隆『読書の日記』で読んだ印象的なエピソードのことだった。阿久津さんが東京行きの飛行機に乗るのに、空港に着いたら、すでに飛行機は出発していた。うっかり出発時刻を間違えていた。

 すると、本来であれば出発前でなければできないのだが、あるいはバスの遅れ等の理由がなければできないのだが、明日の朝イチの便に変更の手続きをすることができるかもしれないとおっしゃる。まさかのご提案で、それならば、山口に一泊しよう、新山口ですかね、と尋ねると、宇部新川にいくつかホテルがあるという、そちらのほうがずっと近いという。それでホテルを探しつつ会ったところ、宇部新川方面行きのバスが出ますよというアナウンスがあり、すると、JALの方はどこかに電話を掛け、そのバス2、3分待ってもらっていいですか、という。それで、あとの手続きはこちらでやっておきます、わかるようにしておきます、明日の、この時間の、この便です、宇部新川からの時刻表はここにあります、と、メモ書きと時刻表の記載された小さな冊子をくださり、さらにバスまで小走りでついてきてくださった。僕はなんだかもう、JALが大好きになった。阿久津隆『読書の日記 本を出す/指を切る/お葬式』p52

 私は、以前にもJALにまつわるこのようなエピソードを聞いたことを思い出した。その人は、恩返しのように、ずっとJALに乗っていると言っていて、『読書の日記』を読みながら、私も、JALにしようかな、と思った。JALは、全国的に、そのようなお客さんがいたら、できる限りのことはしようと教育しているのだろうか、教育と言っても、ここまで大きい会社で徹底できるものだろうか、そういう人のために、毎回、席を開けているのだろうか、たまたまなのだろうか、JALの関係者の方にお聞きしたい。お聞きしたいが、当然のようにJALの関係者を私は知らない。私の仕事でいくと、どういうことをすれば、ファンになってもらえるのだろうか。ファンという言葉が頭の中に浮かんだ。好かれようとすることではないということだけはわかっている。