「まるで、オリエンテーリングをしているみたいだ」。
東京で、路線図を見ながら、俺は、そんなことを思った。
先週の土曜日の夜。
かれこれ12年ぶりになる再会が待っていた。
「ソウブセンに乗って、秋葉原に来れるか?」と、電話口の友達が言う。
「セイブセンに乗れば、良いんだな」と、新宿の西武は、確かこの辺にあったよなと、電話を耳にあてたまま、俺はあたりを見渡す。
「ソウブセンだぞ」
「ああ、セイブセンな」
何度も確かめるやつだな。
セイブセン、セイブセンと。
なかなか見つからない西武線。
そうこうしていると、メールが来ていることに気づく。
「総武線で黄色い電車で秋葉」
あぶねぇ、あぶねぇ。
あいつは、だから何度も、「ソウブな」って、確かめてたのかよ。
夜の11時にもなるのに、満員電車か、東京はすげぇなと思いながら、
やっと辿り着いた総武線。
ちょっとした安堵の空気が流れる車内。
「次は〜、終点。東京です。東京〜です」
結局、総武線の向かいのフォームの電車に乗っていることに気づいたのは、
終点、東京。
12年ぶりの再会は、夜中の12時。
高校の時は、共に白球を追いかけた仲間。
2年の時は、サードという一つのポジションを、
二人で争ったライバル。
「よく喧嘩をするねって言われてたよなぁ」と、俺達2人は、
ひさしぶりにタイムスリップ。
ドントマインド。
略してドンマイ。
「気にすんな」と、エラーをすれば、励まし合う野球。
それが野球の良いところでもあるのに、
俺達は、怒鳴り合い気味で、言い合いをよくした。
その友達は、どうかはわからないけれど、
俺にとっては、それが居心地の良い、
その友達とのつきあい方だった。
その友達は、現在、ゲーム業界に身を投じている。
職種で言えば、3Dグラッフィッカーって言ってたかな。
高校の時には、すでに夢を描いていたらしい。
俺達の高校時代は、そんな話を一つもしなかった。
「すげ〜、おもしろいんだ」と、言う友達の目には、迷いがない。
二度、転職をし、つなぎでバイトをした辛かった、苦しかった話を聞けど、
仕事を辞めているのは、どれも人間関係。
ゲームを作る喜びは消えないまま。
たぶん、今も、それなりに、辛いこと、苦しいことはあるんだろうけれど、
ゲームを作るという、自分の喜びに照準があっているから、
あんな目をしているんだな。
これなんだよな。
俺の目指しているところは。
俺には、「これだ!」って、強いもんがない。
「これで、良いのか?」って、迷いながら、生きている。
だからって、今の仕事を選んだことに、後悔もないし、
選んで良かったとも思っている。
俺は、とりあえず、今を精一杯、もっと楽しいものに変えよう。
俺は、自分のペースで、その目指している所に辿り着こう。