「閉店セール」
俺が勝手に応援していた店が、閉店するらしい。
女性の服を売っている店だから、
俺は店に入ったことはない。
店員と会って話したこともない。
ただ、俺と同年代の人達が経営していたから、
がんばって欲しいなぁと思っていた。
ただ、それだけの関係。
その閉店するということを知った時、
「俺には、向いていないから、もう辞めよう」ってなるのかなぁと、
一人、想像した。
向いていないなんて、思わないで欲しいなぁ。
場所が悪かっただけかもしれない。
環境が変われば、自分の夢をつかめるのかもしれない。
そう、思った。
そういえば、数年前、同じような場面があった。
その人は、泣いていた。
実習が、うまくいかずに泣いていた。
そんな中、職種も違う俺が励ませってことになった。
「ここで、俺か?」
若干、そうは思ったものの、
俺は、その人の隣に座った。
「周りの友達が、楽しそうに実習をしているのを見ると、
うまくいかない自分は、こういう仕事には向いていないんじゃないかって思うだろ?」
「俺も昔、そんなことがあってさ」
その人は、何粒も、何粒も、涙を流しながら、俺の話を聞いていた。
「だけどさ、このたかだか数週間で、
自分が向いていないなんて、思わないで欲しい。
俺も、働いて数週間では、無理だったしさ」
少しだけ話をした後、
その人は、実習中に、泣いちゃいけないと思ったのか、
何度も涙をふき、真っ赤な目をして、
「ありがとうございました」と、実習に戻っていった。
あの人は、今、笑顔で働いているだろうか?
たぶん、大変なこともあるだろうけれど、楽しさも味わっているんだろうな。
そうであって欲しいな。