学生諸君は夏休みに入ったみたいですが、
クワガタやカブトは、もう捕りに行きましたか?
虫で、あそこまで重宝されるのも、クワガタとカブトくらいなもんです。
カラフルさからいったら、コガネムシの方が綺麗なのにね。
コガネムシは、クワガタやカブトに嫉妬しているのかね?
それとも、あぶねぇ、あぶねぇ、人間に捕まらなくて良かったぜって思ってるのかね。
今日は、そんなクワガタとカブトの話をしたい。
うちの母さんは、暇があれば、庭いじりをするのが好きで、
たまたま実家に帰ったその日も、母さんは、庭いじりをしていた。
「あら、クワガタだわ。キャベツの中にクワガタがいた」
母さんは、小学生のように、ちょっとだけはしゃぎながら、
茶の間で、ゴロゴロしている俺に向かってそう言った。
どうせ、ゲンゴローとまちがってんだろ?
そんなことを思いながら、母さんが、クワガタだと掴んだものを見た。
「それ、クワガタじゃなくて、カブトだよ。カブトのメス」
「あら、クワガタじゃないのね。カブトなのね」
すげぇ、カブトじゃないか、そりゃあ、カブトだよ、母さん。
そんなリアクションを求めていたのか、
俺が、はしゃがないことに残念な顔をしていた。
俺は、もうそんな年じゃないのだよ、母さん。
確かに、一度だけ、大人になってからカブトを飼っていたことがある。
新潟にいる時にね。
俺の子どもの頃の北海道には、カブトがいなかったから、一度、飼ってみたくてね。
助さん、角さんと名付けて、飼っていた。
ただ、今は、もう興味ない。
カブトと母さんには申し訳ないけど。
「クワガタは、暑くてキャベツの中で休んでいたのかね?」
「だから、それは、クワガタじゃなくてカブトだって」と言おうとしたが、
めんどくさいから言うのはやめた。
「それにしても、クワガタがいるなんてね」
母さんは、俺も、はしゃげって言っているように、
一人ごとを言っていた。
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