「風呂上がりに飲むっていったら、コーヒー牛乳かカツゲンくらい当たり前に飲んでたよ」
「よーし。今度、北海道に帰ったら、買ってくるわ。まじでうまいぞ」
「いや〜、飲ませるのが楽しみだ」
俺が20代前半に仙台に住んでいた頃、
そう友達に言って、俺は北海道に帰った。
北海道を離れた19歳。
俺は、やきそば弁当とカツゲンが北海道にしか売っていないことを、仙台に来てから初めて知った。
当たり前のように、全国発売されているものだと思っていたら地域限定。
なぜ、そこまでうまいものを、多くの人々に味わってもらわないのかが不思議だった。
そんなわけで、北海道の良さを伝えようと思って、
友達と約束した「カツゲン」を買うことになった。
カツゲンを買うときに財布の中には、数百円。
500ミリリットルを買おうか、1リットルを買おうか迷った。
なぜなら、1リットルを買うと、
仙台駅に着いてから、家までバスに乗れない。
しかし、ここは北海道の良さを思う存分味わってもらいたい。
なんせ、友達がうまそうに飲んでいるのを見たら、
俺にも飲ませてくれってことになっちゃう。
500ミリリットルは、どう考えても一人分。
それなら、1リットルを買うしかないなってことで1リットルを買って、帰ることにした。
もちろん仙台駅から家までは徒歩。
1時間はかかったであろう。
まあ、少々疲れたが、これも北海道の良さを友達に伝えるため。
そうして、カツゲンをあじわってもらうべく、友達に渡した。
「そんなんでもないな」
唖然とした。
風呂上がりには、コーヒー牛乳かカツゲンかってくらい迷う飲み物。
カツゲン。
この時、俺は知った。
期待が膨らめば膨らむほど、そのものの評価はシビアになるということを。
カツゲンがすぐには買うことができない現在。
もう一つ大好物なコーヒー牛乳を、俺は飲みまくっている。