「良いニュースです」
美容師のフジタさんが、にこにこした顔で言った。
ポストカードのことだな。
それくらいしか思い浮かばない。
前回、髪を切りに来た時に、頼まれていたポストカードを持って行った。
あれから1ヶ月。
「狸小路（札幌市）で、弾き語りをしている女の子がいるって話したじゃないですか。その子に、ポストカードを見せたら、この人、知ってるって言うんですよ」
「たぶん、人間違いですね」
何せ、よく人間違いをされる。
たぶん、また誰かと間違われているんだ。
フジタさんは、残念そうな顔で俺の話を訊き、話を続けた。
「その子、ポストカード欲しいって1枚持ってちゃいました」
ポストカードが人から人へと旅をする。
それが、おもしろいし、嬉しい。
その人は、札幌狸小路で、定期的に弾き語りをしている。
10代の頃は、むちゃくちゃらしかったんだけど、
ギターを手にして人が変わったって、
美容師のフジタさんは、いつだったか、そんな話を聞かせてくれた。
いつか、その人に会えるのを、俺は密かに楽しみにしている。
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