どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

花のついた帽子の物語〜一本の電話〜


携帯電話のアラームが鳴った。
目覚まし代わりのアラームは、
何度目かも覚えていない。

布団の中から携帯電話に手を伸ばし、
アラームを切ろうと思ったら、
電話番号が表示されていた。

あぶねぇ、アラームだと思ったら、電話か・・・。
遅刻か!やっちまった。遅刻だ。
職場からの電話だぁ!

慌てて出ようとした電話番号の市外局番は新潟。
新潟?

携帯電話に登録している番号ではない。
銀行か、不動産屋か、
どっちにしても、歓迎すべき電話ではないのだろう。

そんなことを数秒間、
寝ぼけた頭で考えながら、
電話に出た。


「モチダです」


モチダさん・・・。
記憶の糸は、一気にたぐり寄せられた。


新潟のモチダさんは、あの人しかいない。


俺が新潟に住んでいた頃、出逢ったおじいちゃん。
毎日のように、帽子に花をつけ、楽しそうに散歩をしていたおじいちゃん。

初めての作品展をする時に、
写真を撮らせてくださいとお願いをし、
一緒に散歩をして、完成した作品が、


”花のついた帽子の物語”。


作品展後、アルバムに入れた写真をおじいちゃんにプレゼントした。
プレゼントしたアルバムの最後のページには、
俺の名前と電話番号を書いておいた。


ただ、電話口は、そのおじいちゃんではない。


おじいちゃんは、今年の2月に亡くなったらしいと、
新潟に住む友達から聞いた。


おじいちゃんには、同居している息子さんがいるって言ってたっけ。
電話口は、おじいちゃんの息子さんだった。


「アルバムが出てきまして、ぜひ、お手紙を書きたくて、電話をさせていただきました。住所を教えていただけないでしょうか」


すごい嬉しかった。
お礼を伝えた後、
息子さんと少し話をした。


モチダさんとの出逢い、
モチダさんを気にかけていた人が多くいたこと、
作品展で、写真を使わせてもらったこと。


ただ、モチダさんが亡くなったことについては話ができなかった。


寝ぼけた頭がさえてきた頃、
ご家族に、何か、声をかけるべきだったと、
申し訳ない気持ちになってきた。


手紙が来たら、
電話で伝えることができなかったことを書こうと思う。



*****


花のついた帽子の物語 過去の日記


花のついた帽子の物語
楽雲庵塾三周年を迎えるにあたり
花のついた帽子と地震
贈り物



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