二人は、別れを惜しみ、力強く握手をして、それぞれの旅を続けた。
一人は、「サイババに会うんだ」と南に向かい、
一人は、「マザーテレサゆかりの地に行くんだ」と東に向かった。
マザーテレサゆかりの地を目指した俺は、
その旅の途中、タクシーに乗れば金をぼられ、
金をぼられたかと思ったら、インド人と喧嘩をし、
インド人と喧嘩をしたかと思えば、病気になり、
帰りたい、帰って、まずはラーメンを食いたいと、
いつしか、頭の中は、帰りたい一色になっていた。
旅は終わりを迎え、
マザーテレサゆかりの地であるカルカッタに辿り着いた。
今すぐにでも帰りたくて、何も見ないまま、
空港に向かい、日本に帰ってきた。
「愛の反対は、無関心です」
あれから数年後、どこで聞いたかも忘れた、
マザーテレサの言葉が頭に繰り返される。
「ねぇ、マザーテレサ。無関心も悲しいけれど、
悪口、陰口を言われるくらいなら、無関心の方が良いんじゃないだろうか?」
そんなことを考えながら、ビデオ屋で見つけた1本のビデオ。
「マザーテレサ」
マザーテレサは、時に悪口を言われ、時に陰口を言われていた。
カルカッタの貧しい人々への活動は、
時に、修道院の気品を落とすと言われ、
時に、マスコミのスキャンダルに巻き込まれた。
どうして、それでも続けてこれたんだろうか?
無関心も悲しいことです。
悪口も悲しいことです。
陰口も悲しいことです。
マザーテレサが言っていたわけじゃないけれど、
DVDを観ながら、俺の質問は愚問だったと気づいた。
まだ会っていない人に元気づけたいって気持ちは変わらんけれども、
まずは、身近な、大切にしている人からだな。
笑うことからだな。