携帯電話に、母さんからの着信があったことに気づき、母さんに電話をした。
電話口の母さんの声は、何か嬉しそうなことがあったようだった。
「いまね、あなたの小さな彼女が来ているわよ」
「おっ、さつきか?」
さつきとは、妹の子どもの名前で、5月に誕生したばかりの女の子で、
親にとっては初孫で、俺にとっては、初めいだった。
「そう、さつき。来る?」
「いや、忙しいから無理だわ」
「せっかく来てるのにね」母さんの声のトーンが一気に下がった。
さつきが来た時は連絡をくれとは言っていたけれど、
仕事の休憩時間に、わざわざ、電話をかけてこなくても良いのになと思いながら電話を切った。
仕事が終わり、もろもろの用事を済ませて夜8時。
俺は、パソコンをかかえて実家に向かった。気が変わった。
実家に着いたのが夜22時半。
俺は、さつきが寝ている部屋に行き、
寝ているさつきに向かって、
「おはようございまーす」と声をかける。
夜22時半なのに。
さつきは、うすらめをあけて俺を見た。
「うぇぇええん」
「せっかく寝たのに」と妹が溜息混じりに叱責する。
「じゃあ、また明日、遊ぼうね」
はた迷惑をぶちかまし、家族でちょっとばかり話をして、夜が更けて、
気がついたら布団にぶっ倒れていて、起きたのが早朝4時。
パソコンを広げる。
外の世界とシャットダウンするかのように大音量で音楽を流す。
楽雲庵塾本第2巻を書こうと持ってきたパソコン。
先週から、少しずつ、少しずつ書き続けた楽雲庵塾本第2巻も28ページをすぎた。
この章の中盤にさしかかったくらいだろうか。
野球でいうところの4回裏は終了。
妹が俺の部屋に来て、何か話かけていることに気づいた。
イヤホンをとって、妹の方に顔を向けた。
「何してるの?」
「あぁ、本を書いてる」
「それも頼まれているやつ?」
「いや、これは頼まれていない。まだ、途中だけど読みたいか?」
読みたいともなんとも言っていないのに、
「とりあえず読め」と妹に、白いファイルを渡した。
妹は、苦笑いをして、ファイルを持ち、茶の間に戻っていった。
この物語をまったく知らない人に、
どんな印象を与えるかを、試してみたいとも思っていたから、妹はちょうど良い。
父さん、母さんにはちょっとばかり難しい。
妹が読み終わった頃合いに、
茶の間にいって感想を聞いた。
「良いね、良い出逢いだね。それで、この続きを今書いてるんだ」
「そう」
「それで、この人は、この後、どうなるの?」
俺は、この章に登場する人物の、その後の話をした。
妹が、熱中して訊いてくるもんだから、
楽雲庵塾本第2巻の全貌を話しちゃった。
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