どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

街は眠っている

街は眠っている。私は尿意と共にうっすらと目が覚める。携帯電話で時間を確認する。尿意を我慢する。徐々に覚醒し、トイレを済まし、携帯電話でゲームをする。ストーブを点け、黄土色のダウンジャケットを羽織り、外に出る。

街は眠っている。どの家の灯りも消えている。黄緑色のスコップと赤色のダンプを使い、除雪する。雨が降り、雨が降った後に雪が降って、雪が重い。綺麗に除雪できず、除雪した後なのに、駐車場は、でこぼこしている。隣の住人は除雪をしない。まるで除雪しないということを信念としているように。逆の隣の会社の雪山は私の駐車場のスペースを徐々に占拠している。

アパートに入ると、ストーブの前で猫が目を開けている。おはよう、と声をかける。歯を磨き、アイスコーヒーをコップに入れて、チーズ蒸しパンの袋を開ける。ジョン・マクレガー『奇跡も語る者がいなければ』を開く。詩のようで、音楽のような小説。

耳をすませば聞こえてくる。

ジョン・マクレガー『奇跡も語る者がいなければ』は、そう始まる。私は、再び、黄土色のダウンジャケットを羽織り、外に出る。

街はまだ眠っている。耳をすますと、除雪車が動いている音が聞こえてくる。街が起きる前に、除雪車は、道路を綺麗にしてくれる。

奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)

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