にまっと笑い、俺は右手を差し出した。
「仕返しに来ました」男はそう言い右手を差し出す。
夜が始まったばかりの20時。
仕事帰りのサラリーマン、買い物帰りの若者、
人がごった返す街中で二人は握手を交わした。
二人が会う数日前、
俺は自宅に数冊、届いた雑誌を読んでいた。
RELAXという今は発行されていない雑誌だった。
以前にも読んだことがある雑誌で、
また違うものも読んでみたくなって注文をした。
読み終わって違和感を感じた。
以前読んだものと全然、雰囲気が違う。
あれ?RELAXという名の違う雑誌なのかな?
間違って何冊も買っちまったのかなって、
以前、買ったRELAXと表紙を見比べた。
ロゴは同じだった。
前、買ったのが2001年で、今回買ったのが2006年。
5年で、こんなに変わるものなのか?
ちょうどその頃、男からメールが届いた。
男はRELAXの愛読者で、俺にRELAXを読むきっかけをくれた人物だった。
頻繁にメールのやりとりをしないのに、
RELAXを読んでいたら、偶然、メールが届いた。
俺に会いに来るというメールだった。
俺はその偶然を喜んだ。
男とは数週間前にも会った。
俺は会いに行くとも告げず、突然、会いに行った。
今回は、その仕返しだと言う。
二人は再会を果たし居酒屋に行った。
俺はRELAXの変化について訊いた。
「そうなんですよ。編集者が一気に変わるんです。それで間もなく廃刊になります」
本の話、音楽の話、美術館の話、アートの話・・・。
刺激物がバシバシ飛んできて、
俺は忘れぬよう、携帯電話のメモ機能を使い受け止めた。
男は、早朝、この街にたどり着いたというのに深夜バスで帰ると言う。
見送るバス停にたどり着き、
俺は、感謝の意を込めて、再び、右手を差し出した。
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