一冊の本を買うために数時間、車を走らせた。
数日前、その本の存在を知り、インターネットでの取り扱いがないか調べたけれど、調べたところインターネットでの取り扱いはなく、北海道で取り扱っている書店を調べると、1軒のみだった。
本の名は、「文庫X」と言う。
文庫には、タイトル、著書名を隠すためカバーがかけられ、透明のフィルムで覆われていて、一切、中身を確認することができない。以前にも、このような手法で、本を売っている書店があることは聞いたことがあるけれど、興味深いのは、そのカバーの文章にある。
アイディアを考えたのは、盛岡市のさわや書店の店員。
カバーには、こう書かれている。
申し訳ありません。僕はこの本を勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか思いつきませんでした。
だから、こうしてタイトルを隠して売ることに決めました。
この本を読んで、心を動かされない人はいないと固く信じています。
500Pを超える本です。怯む気持ちはわかります。
小説ではありません。小説以外の本を買う習慣がない方には、ただそれだけでもハードルが高いかもしれません。
それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです。
これまで僕は3000冊以上の本を読んできました。その中でも、この本は少しでも多くの人に読んで欲しいと心の底から思える一冊です。
この著者の生き様にあなたは度肝を抜かれ、そして感動させられることでしょう。
こんなことができる人間がいるのかと、心が熱くなるでしょう。
僕らが生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう。知らないではすまされない現実がこの本では描かれます。あなたの常識は激しく揺さぶられることでしょう。あなたもこの作品と出会って欲しい。そう切に願っています。
ここまで読んでくれた方。それだけで感謝に値します。本当にありがとうございます。
※もし既にお持ちの本であった場合、返金いたしますのでお申し出ください。
文責:長江(文庫担当)
本屋さんによっては、この表紙は違うみたいなんだけど、中身は同じ。
で、インターネット上では、こんなふうにつぶやかれている。
「文庫X」を入手された方が口々に「この形(販売形式)でなければ、きっと出会えなかった」と言っている。
私もまだ70数ページしか読んでいないけれど、間違いなく、この形式でなければ買っていなかったであろう本。
せっかくだからタイトルも著者も読み終わってから見ることにしようと思って、ブックカバーをかけて見ないようにしている。