このままで良いのか?
何もしなくて、本当に良いのか?
頭の中でリピートされる。
パチンコ会館玉将の外に一旦、出たものの、すぐに店内に戻った。
店内には、閉店を知らせる音楽が流れていた。
「ありがとうございました、ありがとうございました。お忘れ物なさいませんよう、お気をつけてお帰り下さい」
流暢なアナウンスが店内に流れる。
トイレに行って帰ってくるまでの間に手紙を渡すことができなければ、
もう手紙を渡すこと自体あきらめよう。
これが最後だ。
そう自分に言い聞かせ、
それにしても怪しいよな俺、と思いながらトイレに入った。
そんなにしたくもない小便をしながら、
トイレの前に貼られているビラをなんとなく眺めた。
『王将アイスとパチンコ会館玉将とは一切関係がございません。パチンコ会館玉将店長』
ばあちゃん家で食べた王将アイスを思い出した。
間違う奴なんているのかよ。
ギャグか?
手を洗い、手を乾かす機械に手を突っ込みながら鏡で自分の顔を見る。
トイレのドアが開くのを鏡越しに眺めた。
え?何が起こったか把握するのに時間を要した。
トイレに入ってきたのは、好みの女性店員だった。
戸惑っている俺を見て、
女性店員は照れ笑いを浮かべた。
トイレに誰かいないか、忘れ物がないかを確認しに来たのか・・・。
手紙を渡さないと。
こんなチャンスなかなかない。
勢いが増す。
手が半乾きのまま、ズボンの後ろポケットに手を入れ手紙を取りだした。
「これ読んでください」
封筒にも入っていないメモのような手紙。
手紙は、少し濡れていた。
「え?え?」
女性店員は、頬を紅潮させ、何が起こったか把握できていない。
クレームの手紙ではありませんという言葉がなぜか頭の中に浮かぶ。
「後でで良いんで読んでください」
そう言うのがやっとだった。
トイレから出て、店を後にした。
やっと渡せた。やっと渡せた。
心弾ませる。
180000のラブレター。
つづく。
※この物語はフィクションです。
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次回、最終回。
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