北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

親父祭 前編


その日の父と母は饒舌だった。
車の後部座席に二人で座り、外の景色を眺めながら楽しそうに話をしていた。

「旭岳には、あんた達がまだ小さい頃に行ったきりだから20年振りくらいになるかね」と、
父と母は思い出しながら、俺に話かけた。

「まったく覚えてねえや」俺は、ハンドルを握りながら、ぶっきらぼうに答える。

いつも、俺はぶっきらぼうだが、今日は、いつも以上に無愛想だなと心の中で呟く。
照れくさくて仕方がない。
そう、今日は、父の誕生日を祝う、親父祭だ。


友達から家族旅行に行った話を訊き、
家族が登場する映画を観ているうちに、
俺もやってみようかなと思い立ったのが2ヶ月前。

親父が主人公だが、
今日は、家族全員に楽しんでもらいたい。
家族が楽しんでいる姿を傍らから見て、俺も喜ぼうと今日を迎えた。


旅館に着き、荷物を置いて一段落している妹夫婦がいる部屋で、
「それでは今日の作戦を伝える」と段取りを話していった。

父と母を驚かせるのが楽しい。

部屋を出る俺に向かって、
妹が「さつきのポストカード、今日、くれるんでしょ?」と念を押してくる。
先週、妹に会った時に、ついつい口が滑って、今日、持ってくることを言っちゃった。
「それも秘密だったんだけど、ついつい言っちゃったもんなあ」と悔しそうに話し、俺は部屋を出て行った。


それぞれが落ち着き、「夕食はまだか、まだ30分もあるのかよ」という雰囲気が漂い始めた頃、落ち着かない俺は、みんなに向かって声を上げる。

「それでは、時間があるので、これよりさつきの100日記念式典を開催します!」

妹が拍手する。
何が起きたか把握しきれない他の者達はキョトンとしていた。

「まず最初に、3人へのプレゼントです」と言いながら、ポストカードが入っている袋を妹に渡した。
袋を開け、「わあ・・・」と妹の感嘆の声に、他の者達が群がる。
「うんちはなぜ、三段なのかだって」と言いながら、妹は笑う。

「もう一つ、プレゼントがあります」俺は続ける。
ポストカードのサプライズを言ってしまったため、
小さな花束を用意した。

妹は喜び、「写真を撮って」と、旦那にせがみ、
「おじさん、貧乏なのにね」と娘のさつきに話しかける。

「その花は、来る時に摘んできたから、金はかかってない」と俺は冗談を言って微笑んだ。




つづく



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