どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

マイマウスピース

俺の背中を押したのは、お笑い芸人である劇団ひとりだった。
劇団ひとりは、テレビでこう言った。

「寝る時にマウスピースつけてるんすよ」

寝る時に、マウスピース。
初めて聞く人は、はて?と思うだろう。
なぜ、つけるかというと、歯ぎしりをするから。
あまりの歯ぎしりで、歯がかけちゃうからマウスピースをはめるのである。

そんな何気ない会話は、いつもならスルーして、
記憶にすら残っていないだろうが、
俺の歯医者通いも、終わりを迎え、
最後の最後に、マウスピースを作るかどうかの決断を迫られていた。

寝る時にも、ファイティングポーズをとっているようで、乗り気じゃなかった。
何より、想像しただけで、格好悪い。


完成したマウスピースは、格好悪いには格好悪いが、
ボクサーがつけているような、ごっついものではなく、
上あごにはめる透明なマウスピースだった。

完成したマウスピースをつけた俺に向かい、
歯医者は、「寝る時以外も、踏ん張る機会はありますか?」と聞いてきた。

俺は即座に「はい、あります」と答えた。
生きていくこと、自体、踏ん張ることが多いと、心の中で呟いた。

「どんな時ですか?」

さらに、つっこんだ質問が返ってくるとは思わず、
人生自体、踏ん張ってますなんてことを説明するのもめんどくさい。
めんどくさいから、答えを濁した。

「もし、普段も踏ん張ることが多ければ、普段からマウスピースをつけてください」
そう歯医者は答えたが、「やなこった」と心の中で返答した。



今のところ、寝ている時に、殴り合っている夢は見ていない。



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