凡の花

いろいろあるけれど、それでいい

いなりずし

ふと、実家に帰ってみようかと思った。
北海道に戻ってきて1ヶ月、一度も帰っていなかった。

次の日は、用事があったんだけど、帰ろうかなと思った時に、帰ったほうが良いな。そんな気持ちになって家に電話した。
電話には、母がでた。

「これから帰るわ」ぶっきらぼうに俺は言う。

「元気だったのかい?」か細い声で、母は俺に聞く。

「あぁ」とぶっきらぼうに答える俺に母は、また心配をして言う。

「峠は雪が降るみたいだよ。雪が降っていたら引き返しなさい」

「あぁ」と俺は答え、電話を切る。

5月も半ばなのに、そんなわけがないだろ。そんなことを思い、早速、夜道を車で突っ走る。

1時間くらい走って峠にさしかかった。
雨か?いや、雨にしては軽そうだ。
路面の状態を確認すると濡れている。
これなら行ける。これは、雨だ、どちらかというと雨だと言い聞かせ、車を走らせる。

峠の頂上にさしかかった。

雪だ。
確実に雪だ。

言ったとおりだったな。やべぇな、雪は。
ここ、峠のてっぺん。
ここまで来たら行くも、引き返すも同じ。
それなら、行くしかねぇな。行くしかねぇ。
それにしても、こえぇ。

俺は、雪道の高速道路で一回転した経験がある。
だから、雪がどれだけやばいかを知っている。
ゆっくり、ゆっくりと車を走らせる。

やっとの想いで実家に着いた俺を待っていた父と母。
もう夜8時なのに、飯の準備ができていないのは、
俺が電話した後に、買い物に出かけて、作ってくれているのだろう。

飯を食えば、気づいたら寝てて、
そんな、ろくに親とも会話をしていなくて、
起きたら8時半。

二人とも、家にいなかった。

仕事に行ったのだろう。休日だというのに。
ふと、テーブルの上に、運動会とかで使う綺麗な箱と、唐揚げと割り箸二膳が目に止まった。

俺は、その綺麗な箱をあけた。


いなりずしがびっしり詰まっていた。


覚えてたんだ。心の中でつぶやく。


いなりずし。
俺は、小さい頃、いなりずしが大好きだった。

いなりずしを食べ終わり、割り箸を袋に戻し、唐揚げは、一つだけ残し、ネコに挨拶をして、俺は実家を後にした。


また、気が向いた時に、ふらっと帰るよ。


ありがとう。