北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

カマキリの涙

俺は、寒い空の下、煙草を吸いながら、
ふと、足元の先に2匹のカマキリがいることに気づいた。
1匹のカマキリが、もう1匹のカマキリを喰らっている。

「これが、交尾後のカマキリの姿か。むごいな・・・」

俺は、その2匹のカマキリを、じっと眺めた。
しばらく眺めていると、1匹のカマキリが、
急に振り返り、俺を見る。
いや、睨みつける。
俺には、そう見え、ドキッとした。

「カマキリに睨まれたくらいで、ビビるかよ」
俺も負けじと目を反らさなかったけれど、
ふと、「もし、カマキリに涙があったなら、今は、泣いているのかもしれないな」と思えてきて、「申し訳ない」と目を反らした。

愛すべき人を自らの手で失い、それでも子孫を残す。
カマキリに、悲しいという感情があるかはわからない。
ないような気もする。
だけれども、俺にとっては辛いことのように思える。
そんな場面を興味本位で、見てはいけない。
そう思った。


そもそも、交尾後のカマキリの話は、友達から聞いた。

「交尾後、子どもを産むために、メスはオスを食う。
俺も、食われてもいいやって思えるくらいの人と一緒になりたい」
そんな内容で、「かっこいいよ、その話」と、俺は、友達に言った。

友達は、その話をした数年後、言葉通りの行動をとる。
その行動は、すごい勇気がいる行動だった。
なんとなく、申し訳ない気がするから、詳しくは書かないけれど、
片思いからのスタートを切るわけだ。
俺は、その話を聞き、再び、「かっこいいよ」と伝えた。

それから、さらに数年後の2008年。
その友達は、結婚することとなった。
想いが実現した。

俺は、その結婚式で、三度、「かっこいいな」って、つぶやくだろう。