どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

どうしようもない

 記憶力に自信があったのに、15年以上も経過していると、お互いの記憶はチグハグになり、とは言っても、私はそこに悲観的になっているわけではなく、そんなことがあったっけ、と話を聞きながら、おもしろがっている自分もいる。お前が忘れてるんだろ!という声が聞こえる。忘れちゃいけないことを忘れていたら、笑えないけれど。覚えていたいのに、忘れてしまうからこそ、こうして日記を書き、残しておく行為は、私にとって、大切な行為なのかもしれない、いや、そうだ。日記を公開しているという都合上、全てを書いているわけではないけれど。

 自主制作した『にゃあ』には、チャフ・マッコイという登場人物がおり、私が作り出した架空の人物なのだが、私が作り出したにもかかわらず、なぜ、マッコイと名付けたのかが記憶になく、『にゃあ』を手渡しながら、そんな話をしたら、当時、私が、マッコイ、マッコイ、言っていた、とその人は、覚えていたのである。

 えっ?マッコイって実在するの?と話の続きを訊くと、どうもパチンコで、負けがこみ、パチンコにお金を使うのがもったいないという話になって、パチンコ以外に熱中できるものはないかと探したのか、たどり着いたのが、ゲームセンターで、マッコイは、ゲームセンターのシューティングゲームに登場したキャラとのことだった。私たちは、マッコイを倒すべく、何枚もの百円玉を用意したとのことだった。

 マッコイを倒せた?と私が訊くと、倒せなかった、と即答で返ってきて、倒せなかった!?と驚愕した。ゲームセンターに通っていたある日、ゲームセンターは、お金を使っても、使っても、戻ってくることはないけれど、パチンコはお金が戻ってくる可能性がある、と私が言い、結局、パチンコ屋に戻ったとのことだった。私は、その話を訊き、どうしようもないね、と苦笑いを浮かべた。全く、記憶にない。

 帰りも、私は、マッコイが気になって、そのことをメールで伝えると、その人もそう思っていたということで、平日の真っ昼間に、マッコイを探すとのことだった。日本全国探しても、マッコイを探しているのは、私たちしかいないのは確実で、私は、私で、ここはAIじゃない?と思って、マッコイは誰ですか?とAIに尋ねると、AIすら、わかりません、と返ってきて、絶対、探し出すことは無理だ、とあきらめていたところで、メールにWikipediaのリンクが貼られてきた。マッコイを見つけたのである。

 Wikipediaによると、主人公は、要人救出部隊『GHOST3』に所属するエリート隊員になり、国際テロリスト集団『蒼い狼』と死闘を繰り広げていた。『蒼い狼』は最新鋭の装備を狙いA国大手軍需産業『ITS社』の兵器開発部部長・スティーブ=マッコイを誘拐する、と書かれていた。

 スティーブ=マッコイが、チャフ・マッコイのモデルだった。私は、すごいんだけど、とメールを打ち、マッコイは敵じゃないってこと?と送ると、そういうことになる、と返ってきた。私が、マッコイ、マッコイ言っていたのは、マッコイを倒そうとしていたのではなく、マッコイを救い出そうとしていた叫びだったのだ。

 長々と何の話を書いているのかとも思うが、その人は、どうしようもないことを一緒にできたことが良かった、と言っていて、新潟から帰ってきてからも、そのことを考え続け、やっと、わかるような気がした。

 

 そういえば、当時、私が住んでいたアパートは、アムールという名前で、今、思い出したのだが、アムールという言葉の意味は、フランス語で、愛という意味だった。