特急列車でパソコンを打っていると酔いそうなのでパソコンを閉じ、坂口恭平『けものになること』を開いた。けものと打つと獣と変換され、獣という漢字がかっこいい、と思った。『けものになること』は、詩のようで、頭に浮かんできたイメージを、一心不乱に書いているように感じた。読んだ人は、どんな感想を感じたのだろう。読み終わったら読んでみよう。
トマム駅で、特急列車は停車した。通路を挟んで斜め前の左の座席には、男女が座っており、男性は眠りについていた。この特急列車の終点は、私の目的地だった。つまりは、私も眠りについたとしても乗り過ごしてしまうということはなかった。車掌が起こしてくれるはずだ。いや、起こしてくれないかもしれない。昔、バスで眠りにつき、起きた時には、バスは、洗車しているところだった。私は、どこにいるかわからなくなった。運転手の座席の後ろの席だったので、運転手も気づかなかったようだった。私は、バスを降りて、歩いて帰った。
列車に乗車する前に、妻から、ドトールで読書に集中しすぎて最終便に乗り遅れないように気をつけてくださいね、とLINEが入った。昔、私は、こうして日記を集中して書いていて、飛行機に乗り遅れたことがあった。数時間前に空港に到着していたにもかかわらず。列車には無事に乗れた。ただ、このまま眠りにつき、寝ぼけた状態で、少し離れた場所に置いてあるトランクケースは忘れそうだな、と思った。思ったので、妻に、ちゃんと列車には乗れたけど、心配なのは、トランクケースを忘れて降りてしまうこと、と送信した。妻は、終着駅だから多分忘れても駅員さんが気づいてくれる、と返ってきた。
車内には、この列車は4分遅れで運行しています、とアナウンスが流れた。終点に到着するのは23時55分とのことだった。私はチェックインを24時にしているけれど、24時という時間にチェックインしたことはないので、何時になれば、キャンセルということになるのだろうか、と思った。
新得駅で、すれ違ったのは貨物列車。祖母の家に泊まったときのこと、もう列車が走らない深夜に、列車の音が聞こえてきて、怖かった。私は、祖母の家の窓から、外を見た。外を見ると、長い、長い貨物列車が走っていて、貨物列車は、みんなが寝静まった時間に走ることを知った。
そうこうしていたら、私は眠りについていて、通路を挟んで斜め前の左の座席に座っていた男女はいなくなっていた。帯広駅で降りたのだろうか、と考えながら、私は、終点まで眠りにつき、無事、トランクケースを忘れずに持って改札を出て、ホテルに、無事チェックインでき、こうして日記を書いている。
釧路は雨が降ったみたいで、道路は濡れていた。明日も雨だったら嫌だな、と思った。
