
北広島駅に向かう列車に私たちは乗車していて、乗車している列車に、しばらくの間、並走している列車がいた。ほぼ同じ速度で並走していたので、向こうの列車の中の人の顔がはっきり見えた。並走している列車を眺めながら、これは、映画『君の名は。』状態だな、と思ったのと同時に、私は、向こうの列車に乗っているであろう女性とどう会えば良いのかを考えていた。この列車が停まる次の駅は、私が乗車している列車の次に停まる駅と、同じなのだろうか。私が『君の名は。』だった場合、携帯電話のアプリで、同じ駅に停まるかを調べるだろうな、と思ったが、たぶん、パニック状態になっていて、その判断ができるかどうかは自信がない。ただ、同じ駅に停まったとしても、私の判断と同じく、その女性も列車を降りなければならないのであって、これは、かなり合流するのが難しい。そんなことを考えていると、二つの列車の線路は、離れていって、並走している列車の車名を確認すると、ライラックと書かれていた。ライラックと日記に書いていて思ったが、私たちは、それまで、らいらっく・ぎゃらりにいた。今日の花は、ライラックだった。
妻が、エスコンフィールドに行ったことがなかったので、『日韓ドリームプレーヤーズゲーム2025』に行く?と訊いたのが何ヶ月前だったかは忘れたのだが、妻は、行くと言ったので、妻と一緒に観ることにした。
普段、妻は私が観ている野球中継を一緒に観るくらいで、野球に興味がないので、当然というか、出場選手の顔と名前が一致しないが、私からすれば、もう、すごい選手たちが、いや、すごい選手たちばかりが、出場していた。
一番内川、二番西岡、三番小笠原、四番中田翔、五番糸井、六番今江、七番鳥谷、八番松田、九番谷繁。ね、まさしく日本代表のスターティングメンバー。韓国の四番はイデホ。日本代表の控えには、宮本がいて、松井稼頭央がいて、福留がいる。もしかしたら、バッタリ、選手と居合わせるかもしれない、と思って、サインをいつでもしてもらえるように、鞄の中に、硬球を忍ばせていた。
スクリーンに映る選手の表情が印象的で、今江がバッターボックスに立つ時の嬉しそうな顔が、ホームランを打った瞬間の中田翔の嬉しそうな表情が、野球少年を観ているようで、こちらまで、その感情が伝染した。
帰りの電車の中で、妻にどうだった?初めてのエスコンフィールドは?と訊くと、妻は楽しかった、と言った。もっと具体的に!と私は返した。
鞄の中に、忍ばせていた硬球には、誰のサインも書かれていなかった。



