どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

名乗り出ない美学

 高校、大学ともに、野球部のマネージャーをしていると聞き、私は、なぜ、マネージャーをするのかを訊いた。マネージャーは、日の目を見ることがない役回りで、大変なことばかりではないか、と。その人は、子どもの頃、家族でプロ野球を観に行ったきっかけだったと言った。そして、同期の野球部員が良い人ばかりだった、と続けた。

 高校時代は、先輩が3人いて、4人でやっていたマネージャーの仕事が、私の代になって、マネージャーがひとりになり、やらなければならないことが追いつかなくて、次の日で良いや、と思って、次の日、部活に来てみると、その仕事が終わっていることがあったとのことだった。野球部員の誰かが、名乗りもせず、手伝ってくれていたとのことだった。誰かは、おおよその検討がつくが、最後まで名乗り出なかったという。

 そりゃあ、かっこいい男だ、と感心した。高校生で、なかなかできるものではない。私だったら、やっといたからねと言うか、一緒にやるよ、と声をかけるかするだろう。いや、その大変さに気づかなかった可能性も大いにある。私もそのような男でありたいと思った。名乗り出ないところに美学がある。