どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

チプルソ

 とあるレコードショップから届く小包。小包を開け、うわあ、と声を発した。いつも、なんらかのチラシを入れてくれるのだが、先日、インスタグラムでも知ったコータさんの作品展のチラシだった。新潟との距離が一気に近くなった気がした。せっかくだから、そのチラシに記載されていている説明書きを引用する。 

 今年三歳になった息子と四十一歳の父親による作品展です。息子が家と保育園で描いた平面作品を中心に、父親である私はフライヤー作成、作品選び、展示方法、額作りをし、息子の作品ひとつひとつを紡いで時間と場所が一つの作品になるような展示を予定しています。会期中は息子の日常会話や生活音を楽器に見立ててDJ klock/sanのサンプリングを3にまつわり組み立てた電子音学作家PALの楽曲もお聴きいただけます。『san』

 今年届いたCDは全部で四枚。shabby sic ポエトリーの店主である剛章さんに、CDを選んでもらい、購入する。三枚を基本としているのだが、その年によっては、三枚を超える。CDは、剛章さんとのメールを繰り返し決まるのだが、剛章さんから、この中から選んで欲しいと提案があるパターンもあり、私は、私で選ぶことができないというよりも、もったいないので、全てを購入する。

 もともと、shabby sic ポエトリーで取り扱っているアーティストを私が全然、知らなくて、店主の剛章さんにCDを選んでもらったのがきっかけで、このやりとりは始まり、いつしか、その年の十二月に自分で自分にプレゼントする冬の風物詩的行事となっている。

 何年も繰り返していると、私にも、好きなアーティストができ、私からCDを選ぶこともある。今回、好きなアーティストが増えた。チプルソ。メールのやりとりをしている時に、YouTubeで聴いた。Time Lapseだっただろうか。映像とリズムと声がすごい合っていて、何度も、何度も聴いた。

 


www.youtube.com

 

 剛章さんに、チプルソ良いという内容のメールをしたら、こちらの動画もオススメですよとURLが添付されていて、その動画は、ギターを弾き、ヒューマンビートボックスとラップというスタイルで、これまで観たことがないスタイルで魅入った。それからもYouTubeでいろいろ観ていたら、都築響一さんが、チプルソについて語っている動画があって、もしかしたらと思って、本棚になる都築響一『ヒップホップの詩人たち』を開いたら、やはりチプルソについて書かれていた。全く記憶になかった。

 アルバムのジャケット以外のすべてをートラックもリリックも、録音もミックスもマスタリングもー自分ひとりでこなした『一人宇宙』は、2011年12月30日に発表された。そして制作だけでなく、その販売方法にもチプルソのこだわりは貫かれている。『一人宇宙』はどこでも買えるわけではない。チプルソ本人のwebサイトと一部のレコードショップ、ライブ会場でしか購入できないのだ。それは制作だけでなく、販売までも「一人宇宙」で通そうという、ラディカルな意志のスタイルだった。

 「(ふつうに卸業者を通して)流通させるんじゃなくて、自分でレコード屋さんに持っていって置いてもらう。あとはライブ会場に来てくれたお客さんが、そのあと買って帰ってくれる。いまひとつのライブで30枚ぐらいCDが売れるんですが、そういうシンプルなことをやろうと。会社の人に流通を任せて、無感動に配られて、ヒップホップの『チ』のコーナーにスッと入れられるだけっていうのに僕は反発があって。すべてを自分の手でやっていく、その上でつながっていけたらって思ってたんです。

 ・・・。

 だから自分みたいな、なんのコネクションもなく、お金もなくてってひとらが、僕が味わった絶望を僕のアルバムで聴いて、自分でもやろうって思ってくれるーそういうふうに音楽に希望を見出してくれる、ひとりぼっちの男の子がいたら、それが最高にうれしいです。だって僕の音楽のテーマは、自分が過去のしんどいときに言ってほしかったことなんだし、それが響いてくれたら本望ですから。」都築響一『ヒップホップの詩人たち』p312-314

 

 チプルソが奏でる音楽がなんか良いな、なんかかっこいいなってところ入り、都築響一『ヒップホップの詩人たち』を読んでなおのこと、チプルソが好きになった。私も、自分で自分の本を作りたい気持ちがより一層増した。

 

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