どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

花束

 柿内正午さんの新作出てないかなあと、ふと頭に過ったのが数日前で、パソコンで検索したら、『会社員の哲学』と『町でいちばんの素人』が作られていて2冊、買った。

不在連絡票を手にして郵便局に取りに行き、いつも行くラーメン屋に、『会社員の哲学』を持参してカウンターに座り、しょうゆラーメン大盛を注文した。

 無名で、目立たない凡庸な賃労働者の思想。そういう本がなぜ少ないかって、無名であるからだし、凡庸であるからだ。そもそも著者が見出されないし、見出せたとしても売れはしないだろう。つまり、個人が勝手に作って、勝手に売るしかないのだ。僕が読みたいから、僕が作る。無名で、凡庸な会社員の思想書を。柿内正午『会社員の哲学』p1

 はじめにの出だしから惹かれる。この本、好きかもしれないという本は、たいてい出だしから心を掴まれるなあ、と13ページほど読んで、『町でいちばんの素人』は、どんな感じだろう、と開く。日記の形式で、『プルーストを読む生活』も日記でおもしろかったから、これこれと、今は、『町でいちばんの素人』を読んでいる。『プルーストを読む生活』を読んだ時も思ったが、改めて、柿内正午さんの行動力がすごい。『会社員の哲学』、『町でいちばんの素人』は、自費出版という形で出版しているようだし、本屋さんには自分で営業をしているようだった。

 

 その日の夜は、実践報告会があり、吹雪いていることもあって、早めに自宅を出ることにし、クロネコにネットで購入したコートを取りに行った。早く着たくて、車でダンバールを開封した。サイズがぴったりだった。着ている感じを確かめたくて、コンビニに入って、トイレの鏡で確かめる。

 実践報告会場に着くと、部下のひとりが、体温良いですか?と私のおでこに非接触型体温計をあてた。会場準備係は、立候補で、私が指示したわけでもなく、部下2人が率先して手をあげた。それが私にとっては嬉しいことで、というのは、日頃から、目立つ成果をあげる人よりも、陰ながら、誰かのために動ける人の方を私は評価したいと思っているからで、その2人は、評価してもらいたいという素振りもなく、自然とそこにいたからだった。野球で言うところの個人の成績よりも、ベンチで、エラーをした選手に声をかける選手や、試合に出場していないのに、誰よりも声を出している人を私は評価すると言うことと同義で、プロ野球は、ファンから見えないけれど、現場サイドでは、そこも評価しているのだろう。実践報告会の動画は、今日、初めて私は観ることになったのだが、私たちが大切にしていることが詰まっていて、発表者の想いが詰まっていて、結果云々にかかわらず、満足だった。このようなものは、順位をつけるのは望ましくないのかもしれないと薄ら感じていて、結果発表は、結局、そのような形となった。表彰式で部下は、感想を話しながら、感情が込み上げてきていて、私も薄らと涙が込み上げてきて、マイクを向けられることがなくて良かったと胸を撫で下ろした。業務を終えて遅れてきた部下が一人、また一人と会場に到着した。実践報告会が終了したら、誰からともなく集まってきた。じゃあ、俺は帰るわ、会場を後にした。

 自宅に着いてすぐに、ねぎらいの言葉を残したほうが良い気がして、Slackに送った。送った後に、何度か直した。このメッセージは、次の朝に見るのかなあと思った。朝は、花束のような言葉を読むことから始めたほうが良いスタートを切れるよな、と思った。どちらかというと、注意のメッセージをしてばかりだ。