北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

外国人というだけで、英語が話せるというのは偏見です

 何となく短編小説が読みたくなって、伊与原新『八月の銀の雪』を手に取った。2021年本屋大賞にノミネートされた本で、だから購入したというわけではなく、私が、好きな本屋さんのブログで薦められているのを読んで、読んでみたくなったと記憶しています。はい。

 本のタイトルである八月の銀の雪という物語が、一番、最初の物語で、一発目から、やられた。コンビニでバイトしているグエンというベトナム人が登場する。

 読みながら、私の職場でも外国人を雇用したいと思った。できれば、三浦しをん『風が強く吹いている』に登場した外国人のような人がいい。名前を調べたらムサということだった。ご存知の人も多いと思うが『風が強く吹いている』は、箱根駅伝を目指す物語で、箱根駅伝に出場する外国人と言えば、圧倒的な脚力を持つ外国人であるが、『風が強く吹いている』に登場する外国人(ムサ)は、黒人が速いというのは偏見です、というような外国人である。私は、そんな外国人を雇用したい。外国人というだけで、英語が話せるというのは偏見です、という感じの。と思ったところに、そういえば、織田信長も、黒人を家臣にしたよな、名前は何だっけとネットで調べたら、弥助だった。

『社会に出たら、いくら自分を実力以上に見せようとしても、化けの皮は必ずはがれる。お前みたいなやつは、不器用でもこつこつ何かをやってきた人間には絶対に勝てない』伊与原新『八月の銀の雪』p47

 人間の中身も、層構造のようなものだ。地球と同じように。硬い層があるかと思えば、その内側に脆い層。冷たい層を掘った先に、暑く煮えた層。そんな風に幾重にも重なっているのだろう。真ん中の芯がどういうものかは、意外と本人も知らないのかもしれない。だから、表面だけ見ていても、他人にはけっしてわからない。その人間にどんなことがあったのか。奥深くにどんなものを抱えているのか。それを知る方法はあるのだろうか。グエンが言っていたように、じっと耳を澄ませていれば、中からかすかな音でも届くのだろうか。伊与原新『八月の銀の雪』p47

  短い面接の時間で、その人のことなんてわからないだろ、と最近、めっきりと人を見る目に自信がない。で、伊与原新『八月の銀の雪』を読みながら、先日、面接後に、あまり光るものを感じなかった学生を思い出し、ただ、雄弁でないだけではなかったのか。アピールがうまい学生が、良い働きをするわけではない。であるなら、あの時の学生は、どうだったのか、と迷いが出て、言葉よりも実績を見るべきではないのか、学生時代にやっていたことは、と思い出すと、それは光っているのではないか、と思うに至り、明日の面接前に、実は、前回の学生なんですけれど...と、自分の言った言葉を訂正しようと思った。伊与原新『八月の銀の雪』ではないが、その人の芯の部分に到達するよう努めよう。