福祉サービス提供者が、支援する力をつける理由は、利用者の生活を制限しないことにあると思う。
もっとも支援する上で難しいのは、性に関すること。そう思っていたので、平井威、「ぶ〜け」共同研究プロジェクト『ブ〜ケを手わたす』知的障害者の恋愛・結婚・子育て』を読んだ時には、心揺さぶられたというか、もっとも必要な支援って、友人作り、恋愛、結婚、子育ての支援なのではないだろうか、と思った。
福祉って、幸せということであり、幸せを支援する仕事が福祉であるならば、友人作り、恋愛、結婚は、必要ではないだろうか。
長崎県にある社会福祉法人南高愛隣会には結婚推進室「ぶ〜け」というものがあるということを最近、知って、この本を手に取った。出会いのサポート、夫婦・パートナー生活のサポートをしている。福祉制度とは関係なく。平成15年からというから、今から16年前。16年前からというと、私が就職した頃で、そう考えると、そのすごさが身にしみた。当然、性に関することは考える。考えるけど、どうして良いかわからないかった。いや、今もわからない。ただ、南高愛隣会の職員は遅すぎたとすら言っている。
・・・道徳的に美しいだの、純潔だの、愛される障害者だのというのはやめろと。ドロドロでもいいから、今日1日幸せだなと自分が思えるような人生を送るべきではないか。障害があるが故に、年を取ったときに1人ぽつんとなって。愛する人がいない。誰にも愛されない。誰も愛したことのないという人生はあまりにも寂しすぎる。平井威、「ぶ〜け」共同研究プロジェクト『ブ〜ケを手わたす』知的障害者の恋愛・結婚・子育て』p97
あたり前のことなんだけど、このあたり前のことを実現するのがどれほど難しいことか。
この本で、「愚行の権利」ということを初めて知った。失敗も本人の権利とする。
恋愛・結婚にはトラブルがつきもので、それは障害のあるなし関係ないことなのに、たぶん、ほらいわんこっちゃない、と非難を受けたこともあっただろう。こりゃあ、すごいと思ったのは、トラブルがあった時のフォロー体制も取られているんだなあ、と本書から読み取れたこと。
・・・「どこまで本人に任せるか、どこから介入するか」日々問われるのが現場です。いらぬお節介や口うるさい生活指導、転ばぬ先の杖的なパターナリズムに傾斜するときもあるでしょうし、自己責任だからと放任してしまうこともあるでしょう。だからこそ、「意思決定支援」の質を高めることが必要なのです。平井威、「ぶ〜け」共同研究プロジェクト『ブ〜ケを手わたす』知的障害者の恋愛・結婚・子育て』p263
まずは知ること。