どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

引退する時は来るとわかっているのに、やっぱり悲しくて。

仕事から自宅に帰ってきて、テレビをつけ、番組表をみて、マリナーズ対アスレチックスの試合をつけた。春が待ち遠しいのは、野球シーズンが到来するというのもある。

 

テレビをみながら、ツイッターを見たのか、ツイッターを見てテレビをつけたのかは、定かではないけれど、その中に、「イチローが第一線退く意向」という記事があって、第一線退くって、引退ってこと?と思ってテレビを見ていると、試合後、会見を開く旨のことをアナウンサーが言っていた。

 

本当に引退するの?半信半疑のまま試合を見た。

 

イチローは、「あと1本、あと1本、ヒットを打ちたい」と打席に立っていたように見えた。そりゃあ、打席に立つ時は、いつだって、ヒットを打ちたいと立っているだろうけど、今日、この日に、打ちたいというのが、凡退して打席を去るイチローの表情を見て、伝わってきて、一打席、一球、一球に見入った。

 

こんなに集中して試合を見ているのは、WBC以来で、私が印象深いイチローの打席と訊かれれば、不振で喘いでいた何回大会かは忘れたけれど、たぶん2回なのだろうか、WBCで、最後の最後、決勝の韓国戦で、センター前ヒットを打った、あの打席だ。決勝の韓国戦といえば、やはり第2回WBCだ。

 

8回、守備についたところで、イチローは交代を告げられる。守備についていたチームメイトは、ベンチに戻って、イチローを出迎える。やっぱり引退なんだよね、と心の中で呟きながら、こんな交代のしかたもあるんだ、粋だ、と思う。通常、交代を告げられる選手は、回が始まった段階で、守備にはつかないから。球場内の拍手の中、マリナーズベンチに戻るイチロー。今日、この日に、東京ドームに、観戦しに行っていた人たちは、すごい幸せな瞬間にいるのかもしれない、と思いながら、私が東京に行くのは、24日だもんな、と思う。

 

イチローが出場していなければ、早く試合を終え、会見を見たいところだが、試合は延長に入り、膠着状態。延長が何回まで行ったのかも覚えていない。早く終わってくれないか、と地上波の放送が終わったあとは、BSに切り替えた。BSはとことんまで放送してくれるから好きだ。あの場面で、LIVEで会見が見れないなんて、ありえない。BSがすごいのは、イチローがベンチ裏に下がった15分くらいを放送していたこと。球場内は、コンサートのアンコールのように、再び、イチローが登場してくれるのを待ち、試合が終わったというのに、球場をあとにしない人々がいて、こりゃあ、イチローが出て来ないと、収拾がつかないおではないだろうか、と思ったら、イチローが出てきて、イチローは、会見の前にグランドを一周して、ファンの声援に、手を挙げ、応えていた。

 

なんて、素敵な引退なのだろう、と胸と喉の間あたりが熱くなって、というか、泣きそうになった。

 

会見は、0時を回ったあたりだったか、イチローは、質問に対して、じっくり考えながら、言葉を選びながら、応えていて、あんなふうに受け答えができるようになりたいなあ、だとか、なんか記者が同じような質問をしているなあ、だとか、イチローかっこいいなとか思いながら、会見を最後まで見て、今日、1日のスタートは、眠くて仕方がなかった。

 

コンビニに売っているスポーツ新聞を4紙買った。

 

職場で、イチローの引退って、どれくらいの出来事なんですか?と訊かれ、その人は、サッカーが好きな人だったから、たぶん、サッカー好きの人にとって、カズが引退することくらいの出来事だと思います、と応え、カズは引退していないので、どれくらいの衝撃かはわからないですけど、相当ですね、と言う言葉を聞きながら、私は、ワンピースでいえば、白ひげが死んだくらいの衝撃だなと思ったけど、その言葉は、言わないことにした。

 

つまり、ひとつの時代が終わったというくらいの衝撃だ。

 

言葉が見つからない。

 

引退する時は来るとわかっているのに、やっぱり悲しくて。