川の底が目で確認できた時点で、
俺は河童の肩から飛び降りて、
「グンバズラアアアアア」って、
訳のわからない奇声を発しながら一目散に逃げた。
後ろも振り向かずにな。
そこにTシャツがあることも忘れ、
靴があることも忘れ、
自転車があることも忘れて、
とにかく猛烈なダッシュをかました。
たぶん、今まで、走った中で一番速かったんじゃないかなあ。
人も車も通るような大きな道路まで走って、もう大丈夫だろうと後ろを見た。
河童の姿はなかった。
逃げている時も、もしかしたら河童は追いかけてこなかったのかもしれない。
海パンだけの姿で、家に帰ることにした。
アスファルトを裸足で歩くのは痛かった。
夕飯の頃には、
いつもの夏休みに戻って、
気持ちも落ち着いたけれど、
同時に罪悪感が沸き起こってきた。
俺は命を助けてもらったのに、
化け物を見るみたいに逃げて来ちゃったなあって。
あの河童は、良い奴だったんじゃないのかなあって。
夕飯を食べた後も、風呂に入っている最中も、布団に入ってからも、
あの河童に悪いことをしたなあって、何度も、何度も思った。
川に置いてきた自転車と靴のことも思い出した。
取りに行かないと、かあちゃんにばれたら怒られるだろうなあと思った。
河童から逃げて来たから、自転車をなくしたなんて、かあちゃんは信じないだろうし。
もう一回、川に行ったら河童に会えるだろうか。
明日、川に行ってみよう。
会えたら、河童にお礼を言おう。
そう決めたら眠気が襲ってきた。
※「グンバズラアアアアア」は、実際に友達が発した言葉ですが、その他の物語はフィクションです。
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