どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

楽雲庵”塾”といえば校舎、校舎といえば学校


炭鉱以外にも、古い建物はないかなと、道路脇をちらっ、ちらっと見ながら、車を走らせた。

俺は、雨竜(うりゅう)って町に来ていた。
雨竜の隣の町は北竜(ほくりゅう)。

おっ。あれは、もしや学校じゃなかったか?
木造立ての校舎だったよな。

一度は、通りすぎたものの、せっかくだから写真を撮っていこうと、車をUターンさせた。

はたまた、鎖がついている。
立入禁止かと思いきや、”豆電球”って札が下がっていた。

豆電球?

意味はわからないが、立入禁止じゃなきゃ入っても良いよなと思い、
鎖の前に車を止め、俺は、鎖をしゃがんでくぐり、敷地内に入った。

おっ、早速、古いものが庭に転がっている。
たぶん、これはストーブだな、学校の焼却炉だ、たぶん。
シャッターを押す。

周りを眺めながら、徐々に、校舎に近づいていった。
校舎の周りには、花が置いてあって、なんとなく、人がいるような気配を感じた、
その時、校舎から人が出てきた。

ちょっとだけ、びびった。
おじさんとおばさんが、中から出てきた。

「こっちが駐車場だよ」
おじさんは笑いながら、指を指した。
校舎の脇には、車が何台か停まっていて、どうも入る場所を間違えたと、おじさんの話を聞いて気がついた。

「ここって、何かやってるんですか?」素直に質問をした。
「骨董品を売ってます」

ここは、学校じゃないのか?
骨董品に、あまり興味はなかったけれど、
建物の中に入れるなら、見ていこうかなと思った。

”豆電球”ってのは、店の名前だった。

俺は、豆電球に入って、そこに広がる光景を目の当たりにし、声を上げた。
「すげぇ」
おばさんがニコニコしながら、俺を見ていた。

やっぱり学校だった。
骨董品ってこれなのか。度肝を抜かれた。
昔のおもちゃ、昔のカメラ、昔の鉄瓶、昔の黒電話、昔の・・・。
とにかく、めっちゃくちゃ、すごい量の、それは、博物館級の内容で、博物館級の量が置いてあった。
しかも値札がついている。

俺は、あまりにも嬉しくなって、「店の中って、写真撮っても良いですか?」と口走る。
口走った直後、売り物だからな、売り物を撮っちゃだめかもなって思っているところに、おばさんが、すぐに「良いですよ」と微笑みながら言った。

ん?これは、理容室の赤、青、白の回るやつ。
学校の中に床屋でもあったのかと思いきや、
その奥には、廊下があり、さらに教室らしきものが続いているように見えた。

「うぉ、こっちもですか?」俺は、興奮しっぱなしで、おばさんに聞いた。
「はい」

半端ない。半端ないぞ、この量。
廊下には、昔の日本地図や、昔のレコードや、白黒の写真が飾られていた。
白黒の写真は、”雨竜中学校”と書かれていた。
向こうの教室、いや、この広さからいくと体育館か?

一人、写真を撮りながら、ふと、来年、作品展をする友達との会話を思い出した。

「廃校になったところを借りるってのはどうよ?」
楽雲庵塾って”塾”がつくだけに学校。
使われなくなった学校を、再び、使うなんて、なかなかおもろい発想じゃないか。
学校だと、作品の量も必要だなと考えながら友達に聞いた。

「良いね、良いね」
友達が賛成してくれたのに、伴い、友達と打ち合わせをして帰ってきてからも、俺は、廃校で作品展をすることを考えた。
考えていると、そもそも廃校になった学校って、生徒が少なくなっただけあって、人通りが少ない場所にあるんじゃねぇか?そうなると、人をよぶのは難しいよな、なかなかおもしろそうだったのになぁ。廃校になった学校は難しいな。
と思っていたところに、今回のこの出逢い。

ここでやりたい、ここでやりたい、ここでやりたいというか、ここしかない。
興奮しっぱなし。

ふと、冷静になり、この中だと、俺等の作品が目立たないかもしれんなと思った。
思ったけれども、もう止められない。

俺は見終わった後、おばさんのところに戻った。
作品展の話をするために。

「いやぁ、びっくりしました。これをやろうと思ったのは、すごいです」
「ありがとうございます。旦那とこんなことしたいねぇって話をしていて、3年前から始めたんですよ」店ができるまでの話、雨竜中学校の校舎の話を聞いた。
「どこか教室って空いていないんですか?ぜひとも、ここで作品展をさせてもらいたいです」
「そう言ってもらえるのは、ありがたいです。前にも、そう言ってくれた方がいました。だけど断ったんですよ。消防法とかで、他の教室を使えるようにするのも大変なんで・・・。ちょっと旦那に聞いてみますか?」

俺の顔が、あまりにもがっかりしていたのか、おばさんは、俺をおじさんのところまで案内してくれた。

おじさんが、奥の方から出てきた。
おばさんは、簡単に俺の話をしてくれ、レジの方に向かった。

「まぁ、どうぞ。」
木製のテーブルと椅子がある所に座った。

「どんな作品なんですか?」
「写真に、言葉を添えたものです。作品展は、友達と二人でやるので、ちょっとイメージは変わるかもしれないですけど。今、車の中に置いてあるので、取ってきます」

俺は、出かけるときは、車の中にポストカードを積んでいる。
そのポストカードが入っている紙袋と、プロフィールを持ち、おじさんのところにダッシュで戻った。

「これ、プロフィールです」まずはプロフィールをおじさんに手渡した。
おじさんがプロフィールを読み終わるのをじっと待つ。

「インドに行ってるんですね」
「はい、それ以来、もう外国には行かなくて良いかなって思いました」

おじさんと話している所に、おばさんがコーヒーを持ってきてくれた。
おじさんの横の椅子におばさんも座り、おじさんは、おばさんにプロフィールを渡した。

今度は、おばさんがプロフィールを見て、おじさんが、ポストカードを見る。

「ふふっ、ビールかけをしたんですね」おばさんがプロフィールを見ながら笑う。
「はい、前から、ビールかけをしてみたくて、一人でやりました」

おじさんがポストカードを見ている合間、合間に、俺達が計画している来年の夏の話をした。

「良いでしょう」
おじさんは、微笑みながら了解してくれた。

「これも何かの縁です。ポストカードもうちで置きますか?」

作品展を了解してくれたことだけでも、嬉しくてたまらないのに、ポストカードを置いてくれることにもなり、俺の目は、これでもかと、輝いていたと思う。





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※今回ポストカードを置いていただいた店

[豆電球]

〒078-2600
北海道雨竜郡雨竜町字満寿36番地80
��&Fax:0125-78-3310
営業日:土・日・月・火曜日
11:00〜18:00(11月〜3月は16:00まで)
URL:http://www.d2.dion.ne.jp/~miyaguti/


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ARTs*LABo P-web05
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