鴉-KARASU-
西の空が赤く染まる。
今日も同じように繰り返される一日が終わった。
「アイツ。また彼処でタバコをふかしてるな」
「ニンゲンの一日の仕事も、もう少しの時間で終わりだもんな」
「今日は、何してた?」
「ああ。いつもと同じだよ。お前はあいかわらず、ニンゲンの女の子の家の前に栗を持って行っているのか?」
「ああ。」
「どうりで、嘴の傷が増えてるわ」
「学校に行く前に栗を見つけるとすごい喜ぶんだよ。お母さん、今日も栗を見つけたって。俺はニンゲンが出したゴミの所でそっと見てるの。楽しいぜ。あの子が喜ぶ顔を見るのは」
「俺等、ニンゲンに嫌われてるだろ?何もしてないのによ。あの子は珍しいよ。こんな俺に優しくしてくれたからね。ニンゲンも捨てたもんじゃねぇよ。」
「俺等はやられたらやり返す。恩を受けたら恩を返す。というのが絶対だからな。それで何をしてもらったのよ?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
「あれは夏の日の話。どれくらい川をギリギリ飛べるか試してたら、おもいっきり石にぶつかってよ。翼がやられた。翼は水を含んで思うように飛べねぇし、痛しでね。結局、川でおぼれた。」
「うけるね」
「うけねぇよ。もう死んだと思ったね。何で俺は川をギリギリ飛ぶみたいなことをしたんだって後悔したよ。」
「それで?」
「そうしたら、女の子が通り過ぎてね。どこかに行ったと思ったらムシをとる網を持ってきて、それで俺を助けてくれたわけ。寒くてふるえていたところに、今度は葉っぱをいっぱい持ってきて、俺にかけてくれた。まじ救われたわ」
「ふーん。なかなかないね」
「そうだろ?だからこの秋の間くらい、その子を喜ばせたくてね」
そんな鴉達の日常的な会話。