北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

ひとりの時間

私、仕事好きなんです。

 

思いつきだったのか、会ったら話をしようと決めてたのかはわからないけど、助手席のその人は、唐突に話を始めた。

 

何か買い物をする際に、店員と会話をしていると、この人、この仕事、好きなんだなあ、と感じる瞬間があって、できれば私は、そんな人にお金を払いたいと思っているんだけど、そのことには触れず、確かに、この人は、そんな類の人なのだろうなあと思いながら、すごいなあ、と軽い感嘆の声とともに、じゃあ宝くじが当たっても仕事やめないですか?と訊いた。

 

宝くじが当たったらやめます。やめて南の島に行きます、と助手席のその人は笑いながら言った。

 

いつかの私も南の島に行きたいと思っていたと思い出しながら笑った。

 

なんで、この仕事を始めたんですか?前々から訊きたかった質問をした。

 

その人は、あまり過去のことを語りたがらないと誰かが言っていて、本当のところはどうかわからないんだけど、自然の流れというか、その人は、過去のことを語りだした。

 

もっと集中して訊きたかったけど、私たちは、仕事中で、目的地に向かっている最中だったので、ところどころがうる覚えだ。というか、何度か同じ話を聞かなければ理解できないほど、盛りだくさんの物語がある。

 

今日の仕事も終わって、ひとり、自宅のアパートに向かう途中に、ふと、一人の時間を持った人というか、孤独の時間を持った人というか、周りの人と合わせるのが苦手だと思っていた人というか、そんな経験をしている人というのは、私が持っていない価値観や視点を持っていて、私は、そんな人の話を訊くのが好きなんだな、と思った。

 

自宅のアパートについて、携帯が見当たらないことに気づいた。