北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

愛すべきくだらない夜に

乗車券は、札幌ー旭川間のS切符だったので、特急列車に乗れたのだが、普通列車の方が出発時間が早く、到着時間もちょうど良かったので、各駅停車の普通列車で、旭川に向かった。

 

普段の移動はもっぱら車で、休日にこうして列車を使い、移動するのは、珍しく、新鮮で、楽しかった。

 

旭川の日帰りだったため、帰りに眠くなってしまうのと、久しぶりに会う友人との席で、お酒を飲みたいのとで(と言っても、一杯くらいしか飲めないのだが)、列車にした。

 

旭川駅が新しくなってから一度、訪れたことがあるが、木を基調とした駅は、他では見たことがなく、この駅、素敵だな、と改めて思った。

 

構内には、安田侃の作品らしきものがあって、安田侃の作品か確かめようと、見にいったのだが、誰の作品かは明示されていなく、わからずじまいだったけど、あれは、たぶん安田侃

 

友人との待ち合わせ時間まで一時間ほどあったので、隣接していたイオンのフードコートで本を読みながら待つことにした。

 

いつイオンができたのだろうか。私の記憶には、イオンはない。

 

部活を終えた高校生が、ちらほらいたが、こうして、デパートのフードコートや、ファースフード店で、学生と会うと、私の高校時代とは、全然違うな、と羨ましくなる。

 

友人と合流し、何十年ぶりだろうかというくらい久しぶりに買物公園を歩き、歩いたといっても、雨が降っていたので、すぐ近くの地下飲食街に続く階段を降りた。

 

旭川駅は素敵に再開発されたが、この地下飲食街は、昭和の時代から変わっていませんといった佇まいで、私は、こんな雰囲気が好きで、この地下飲食街は、このまま残って欲しいと思った。

 

17時前に開いていた居酒屋に入って、ビールと梅酒を注文した。

 

人生について話したい、と、乾杯したあとに友人が言った。おもしろいテーマだな、と思った。

 

話を訊くと、欲がなくなり、楽しみもなく、やりたいことはだいたいやりつくし、もう諦めているというか、いつ死んでもいいや、という心境になっているということだった。

 

最近、私も、40代に関する本を立て続けに読んでいたせいか、立ち止まって、現在の自分を見つめていた。最近、読んだ本の話や、私の考えたことなんかを話した。

 

諦めるべきことは諦めた方が良い。別に楽しみを無理に作らなくても良いし、やりたいことを無理に作る必要もない。こうして、会いたい友人に会えるのなら、それだけで十分。私の話は、腑に落ちていないような気もしないでもないが、今の私は、そう思っているから仕方がない。

 

二軒目も、地下飲食街の中の店で、そこで話していたのか、一軒目だったかは忘れたけど、友人が話した匂いの話が興味深かった。

 

なぜ、家族である、母や妹に発情しないのか。当たり前で、想像するだけで、気持ち悪いって話になるけど、よくよく考えれば、不思議なことで、友人は、そこに疑問を持ち、ネットで調べ、本を探した。どうも発情しないようにする匂いを発していて、そのことにより、近親相姦にならないらしい。

 

びっくりするほど、どーでも良い、くだらない話をして、腹から笑った。

 

時間は20時半。宴もたけなわ。駅に向かって、イオンの店内を2人で歩いた。

 

「おまえは、年をとったけど、全然、雰囲気が変わらんな」と友人が言った。

 

じゃあ、また会おうと、改札に切符を入れ、いつも見送る側だけど、振り返って、友人がそこにいなかったら、寂しい気持ちになるから、振り返らないでおこうと、エスカレーターに乗った。

 

夜に走る列車の中で、読みかけの藤沢周平『海鳴り』を開いた。