どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

鳥の雛は巣から落ちてしまったら死んでしまうと、先生は言った。

車を停め、職場に向かって歩いていると、アスファルトに何か落ちているのが見えて、なんだろうと、凝視すると、鳥の雛の死骸だった。

 

まだ毛も生えていない、その鳥が何の鳥なのかはわからない雛。巣から落ちたのだろうか。周りを見たけど、巣がどこにあるかもわからなかった。

 

職場に入りながら、私は、小学校の頃、すずめの雛を道路上で拾って、家に持ち帰り、育てたことを思い出した。

 

それまでもインコを家で飼っていたこともあり、そのすずめの雛に、インコの餌をあげたのだが、すずめの雛は、全く口にせず、当時、インターネットなんかないから、どうしようと悩んだ末に、私は次の日、学校の理科の先生に、どうすれば良いかを訊いた。

 

食パンを細かく千切ったものをピンセットで、「ピー、ピー」と鳴きながら、あげると食べると教えてもらった。鳥の雛は巣から落ちてしまったら死んでしまうことも知った。

 

一刻も早く、昨日から何も口にしていない、すずめにえさをあげたくて、担任の先生に、すずめにえさをあげるから早退させてくれと告げると、それは、だめだと言う。なんて冷たい担任の先生なんだと思いながら、学校が終了してすぐに、走って、自宅に帰った。

 

理科の先生がいうようなやり方で、すずめはえさを食べ、私はそのすずめに、ピー助という名前をつけて、育てた。

 

そんなことを思い出しながら、職場のアスファルトに落ちている鳥の雛の死骸を見て、このままだと、カエルの死骸のように干からびていくのだろうか、とか考えていると、いたたまれなくなって、私は、土に埋めてあげることにした。

 

そっと、手のひらにのせ、どこに埋めようかあたりをみると、木があったから、木のそばに埋めてあげようと思って、そこらへんに落ちている石で穴を掘り、その雛に土をかぶせて合掌した。