新人研修について検討している時に、一人の職員が、「利用者の生活史について学ぶっていうのはどうですか?」と言った。
その意見を訊きながら、やるなあ、と思った。利用者の生きてきた歴史を知ることが重要だと思う機会は、ここ何年か、何度かあったのに、この場では、まったく思いつかなかった。
そんなことがあった夜、私は、六車由実『驚きの介護民俗学』を読んで、今、読むにはぴったりの本だな、と思った。
介護民俗学が、 利用者の生きた歴史を聞くというものだった。
民俗学者の六車さんは、大学をやめ、老人ホームで働く。民俗学と社会福祉学。まったく関係ないようなものを組み合わせると、こんな魅力的なものになるんだ、と読んだ。
読みながら、職員との対話と共感も大事だけど、そもそも利用者との会話を大切にしてきただろうか、と自問自答した。
問題行動だと思うことも、利用者の生活史を知ることで、全く見えかたが変わるんだと、その重要性を知った。
この本は、かれこれ3年前に、薦めてくれた人がいて、すぐに買ったんだけど、数ページ読んで、読むのをやめ、本棚に置いておいた本だった。
シリーズケアをひらくの一冊で、この前読んだ東畑開人『居るのはつらいよ』を読んでいる時に、次は、読まないままだった六車由実『驚きの介護民俗学』を読もうと思って、開いて、読むのは、ちょうど今だったんだな、と思った。
驚きの介護民俗学は、看護師のためのウェブマガジン『かんかん!』に連載されていたものらしいということを、本の後半で知り、そういえば、5年前に、この『かんかん』を薦めてくれた人を思い出し、いろいろ繋がってくるなあ、と不思議な感覚になった。当時、『かんかん!』を、パラパラと見ただけで読んでいなかったので、改めて読んでみようかと思った。
そういえば、過去を聞かれるのを嫌う人にも出会ったことがある。
あと、魅力的だと思う人を観察していると、過去の話をする人ではなく、今の話をしている人かな、とか考えたこともあったんだけど、
今回、改て、その人が、どんなふうに生きてきたかを知ることの大切さを知った。