北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

禁煙しているセールスマン

夜勤を終え、コンビニの前でタバコを吸っていると、「かっこいいですねえ」と同じくタバコを吸っている隣の青年が声をかけて来た。

 

何が?と、一瞬思ったが、青年の視線の先には、私の車があって、どこが?と思った。ただの軽自動車なのに。「そうですか?」と私は素直な感想を述べた。「これだと、大きいタイヤも履けるなあ。リッター何キロですか?」「17キロですね」「結構、走りますねえ。いくらですか?」「ん〜。170万円くらいだったかなあ。同じタイプの車がスズキにもあります」「へえ、そうなんですね。中も広そうですね」「後ろのシートが倒せるので荷物は、いっぱい載せれますよ。後ろのドアはスライドドアになってます。それでは、ご検討ください」と言いながら、おれはセールスマンか!と心の中で呟いて、1日が始まった。

 

向かった先は、禁煙外来禁煙外来に通って2週間。ちょうど薬が切れる日だった。煙草は確実に美味しくなくなっており、煙草の本数も減った。順調、順調と思っている私に向かって医師は、ため息混じりに、こう言った。「やめられないですかねえ」。

 

苦虫を潰した表情で、説教じみた話が続いた。心の準備はできていたけれど、心のコントロールを失いそうになった。煙草を吸ったこともなければ、煙草をやめたこともない人なのだろう。

 

「煙草を嫌いになれませんか?煙草好きですか?」医師の口調は威圧的だった。嫌いになりたいと言わせたいのだろう。

 

「はい。好きです。好きですけど、煙草はやめます」好きでも、あきらめないといけない恋もあるだろう、と私の心は暴走を始めた。

 

「それじゃあ、また吸ってしまいますよ」また、説教じみた話が、続くのかとげんなりし、もう来るのはやめようかな、と思った。