北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

とんかつともっきり

職場の同僚から、「今日、ご飯行くんですよね?」と言われ、確かに、18日、ご飯どうですか、と私から数日前に誘ったけれど、何の返信もなかったから、予定は流れたと思っていたけど、明日は休みだし、そんな感じも、同僚らしくて良いな、と思いながら、「行きますか」と仕事が終わってご飯を食べに行った。

 

その行った居酒屋というのが、その同僚が大学生の時に、よく通っていた店で、かれこれ20年ぶりだと言っていた。着いたのは寂れた商店街にある居酒屋で、その商店街の店は、ほとんどが閉まっていた。

 

居酒屋に入ると、思いのほかお客さんがいてびっくりする。近所の人たちが常連なのだろうか。店内を見渡すと、テレビの横の棚にだるまが置いてあって、祝30周年と書かれていた。30年前というと、平成が始まった年で、もしかしたら、もっと前からある店かもしれない。職場の同僚は、通っていた頃と何ら変わっていないと言っていた。

 

同僚が、私の隣の席の夫婦が注文したものを美味しそうだというから、私は、隣のおじさんに、それ何という食べ物ですか?と尋ねた。しらすのほうれん草炒めと教えてくれて、私たちも注文したが、ほとんどを私が食べてしまったかもしれない。しらすが入っていた感じがしない。

 

オーナーは、焼き鳥を焼き、私たちが帰る頃には、カウンターでお客さんと一緒に焼酎を飲んでいたり、キッチンでも煙草を吸いながら、焼酎のお湯割をジョッキで飲んでいた。

 

気づいたら、同僚の隣の席に、50代中盤くらいのサラリーマンが、一人、とんかつとキャベツがのっている皿を注文し、ただ、そのとんかつには手をつけず、もっきりを少しずつ美味しそうにすすりながら、テレビを見たり、考え事をしていた。とんかつは、もっきりを飲み終わった後に、食べるのだろうか。私は、そのサラリーマンが気になって、ちらちらと、眺め、その人の人生を想像した。

 

職場では、顧客に神経をすり減らし、上司と部下の板挟みになっているのかもしれない。嫌なことがあっても、ぐっとこらえ、感情的にはならない。仕事帰りに、ひとり、ここの居酒屋で、お酒とちょっとしたご飯を食べるのが、些細な楽しみであり、ご褒美。ほろ酔いで自宅に帰ると、灯りは灯っていなく、部屋もひんやりとしている。