末井昭さんのことを知ったのは、ツイッターか、何かで、本の紹介をされているのがきっかけだった。
この人の本を読みたいなあ、と思っていたら、テレビで、末井さんを題材にした映画をやるのを知った。
映画は観ていないんだけど、ブックオフでたまたま末井さんの本を見かけたので買った。
末井さんの母親は、末井さんが小学生になったばかりの頃、隣の家の青年とダイナマイト心中した。
末井さんの故郷は、 岡山県の田舎の村。私も、近所の人はだいたい顔見知りの田舎に住んでいたので、家族が、そのような死に方をしたら、どんな噂が立ち、自分がどんな状況になるかが、想像できた。
母の死をずっと言えなかった末井さんなんだけど、東京に出て、芸術家の篠原勝之さんと出会ったのをきっかけに、母のことを話せるようになり、自殺についても話すようになった。
この本にも、家族の自殺というのは、世間的には、たぶん不利だけど、アーティストになると、それがプラスになるから不思議と書いてあって、末井さんが表現に関係した世界に行ったというのも母親のおかげだと書いてある。
よくここまで自分のことを赤裸々に書けるなあと思いながら読んだ。借金のこと、愛人のこと、ギャンブルのこと。読みながら、胸が痛くなることもあった。
赤裸々に、自分のことを語り、自分の無様な体験を話すことが、誰かの生きる糧になるのかもしれない。
そんな末井さん自身のことと、自殺に関わってきた人たちのインタビューという形で、本書はすすむ。
インタビューで登場してきた人たちも魅力的な人がいて、いつか、ここで登場した人たちの本も読みたいな、と思った。
最後に、この本の最後の方に書かれた文章を紹介して終わります。
本当は、生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です。そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しずつ取り除かれていけば、社会は良くなります。取り除かれないにしても、生きづらさを感じている人同士が、その悩みを共有するだけでも生きていく力が得られます。だらか、生きづらさを感じている人こそ死なないで欲しいのです。「自殺」末井昭