どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

街の外れにある陶芸教室のはなし

街の外れに、陶芸ができる場所がある。

 

母屋と作業場と五右衛門風呂があり、夜になると星が綺麗だろうな、と思うほど、周りには何もない。その陶芸教室で、過日、生まれて初めて陶芸をした。一輪挿しの花瓶が家にあったら良いなと思って。

 

今までやったことがないことをするのは良いもんだ。新しい風が吹き込んだような感覚になった。私は趣味が狭い。拡げようとも思っていなかったけれど、こんな気分になるなら、新しいことをするのも良いなと思った。

 

今日は、一輪挿しの花瓶に、色を塗ろうと思って、その陶芸教室に行った。

 

始めて母屋にお邪魔させてもらったんだけど、すごい雰囲気が良い。薪ストーブと囲炉裏があって、居間は板間。居間には備え付けの本棚があって、何冊もの本が並べられていた。「良いっすね、良いっすね」と連呼しながら部屋を眺めた。家主のおばさんは、いつでも使って良いと言う。

 

知らない本ばかりだなあ、と並べられている本を眺めた。2冊だけ、私が持っている本があって、目が止まった。「その本。私の息子が書いたものなの」と家主のおばさんが言った。耳を疑った。お母さん?

 

その小説家は、私が好きな小説家の一人であり、家には5冊ほどあって、「私、何冊か本を持ってますけど、おもしろいです」と伝えた。おばさんは、今まで、そんな人に出会ったことがない、と喜んでくれて、今日の出来事を手紙に書き、息子に送ると言う。

 

今度、サインくださいと言ったが、そこはうやむやになって終わった。