どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

民謡を聴きながら

俺は思い出した。

子どもの頃、
かあちゃんが新聞のテレビ欄で民謡の番組を見つけると、
ばあちゃんに電話をして教えていたっけ。
ばあちゃんは民謡が好きなんだっけ。

俺は、ばあちゃんに、どんな民謡が好きかを訊いた。
「岩手だったか、秋田だったかに良い民謡があるのよお。若い頃は、みんなの前でも唄ったねえ」


そんな会話を交わして数ヵ月後、
俺は電気屋へ向かい、ツタヤへ行った。
良いアイディアが浮かんだって思いながら。

いつだったかのゴールデンウィーク初日。
俺の浮かれた気分は、一気に地に落ちた。
財布を落とした。
カード類も財布に入れていたから、お金をおろすことすらできなかった。

そんな俺をみた、ばあちゃんが、「これ遣いなさい」って1万円を手渡してくれた。
「あとで返すね」って言って、後日、お金を持って行ったんだけど、
「もう、この年になるとお金はいらないのよ」と、いっこうに受け取らない。

そこで、思いついた、ばあちゃんが受け取る方法。
お金ではない、何かをプレゼントすれば良いってこと。


電気屋でラジカセを買い、ツタヤで民謡を何枚か借りて、CD-Rにやいて、
俺は、ばあちゃんのところに向かった。
彼女もつれて2人で向かった。

「ばあちゃん、これ、プレゼント」
ガサ、ガサッと、ラジカセを箱から出しコンセントを探す。

「そんな高いものもらったら申し訳ない」

「そんな高いもんでもないから、いいの、いいの」

電源をコンセントに入れ、秋田の民謡をセットした。
部屋には民謡が流れた。

ばあちゃんは民謡を聴き、「秋田の民謡は良いねえ」と言った。

「そうだろ、そうだろ」俺も微笑んだ。


民謡を流しながら、3人で会話を交わす。
頃合をみて、ばあちゃんに報告した。


「ばあちゃん、俺、結婚することにした」


帰り道、俺は思い出した。
ばあちゃんは、4年前のことを覚えているだろうか?

ばあちゃんの家に遊びに行った帰り際、
俺が靴を履こうとしている時、
中越しに、ばあちゃんが言った。

「早く、楽になると良いね」

俺は、「どういうのが、楽ってこと?」と訊き返した。

「嫁さんもらって、金もある程度蓄えてさ」

ばあちゃん。
俺は、それからさ、いつか、こうして、
「結婚することにした」って報告ができれば良いなあって思っていたんだ。


楽ではないけどね。
楽ではないけど、楽しいことが、いっぱい増えたよ。




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