北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

歯科衛生士さんと


中1日で、また麻酔。
心臓がせわしなく動いているのを感じる。
苦手なものに麻酔がランキングされた瞬間だった。
その日も1回じゃ効かなく2回麻酔を打つ。
奥歯に。

「大丈夫ですか?」
歯科衛生士さんが、いつものように優しく声をかけてくれる。

「大丈夫です」

そう言ったあと、
大丈夫じゃない時はどうするのだろう、
救急車で運ばれるのだろうか、
救急車で運ばれた人っているのだろうかと、
麻酔で大丈夫じゃない場合を、
あれこれと考えた。

「アンケートよろしいですか?」
歯科衛生士さんはファイルに挟めたA4サイズの紙を片手に持ち、
俺の顔をのぞき込む。
歯医者でアンケートをとられるのは初めてだ。

先日の麻酔の時、
舌を噛んだのか、舌はまだ痛く、
あまり話をしたくなかったが、
断る理由もなかったから、
アンケートに答えるのを了承した。

「歯ブラシは大きめですか、普通ですか、小さめですか」

「普通ですかね」

「歯ブラシは、固めですか、普通ですか、やわらかいですか?」

「普通です」

「何かお気に入りの歯ブラシあります?」

「いや、ないっす」

「糸ようじは使ってますか?」

「使ってません」

「歯ぎしりします?」

「するみたいですね。前回、マウスピースも作りました」

「マウスピースを使ってますか?」

「使ってません」

「何か理由がありますか?」

「ただめんどくさいだけです」


歯科衛生士さんはマスクをしていたが、
マスクの下の口は微笑んでいるように思えた。
アンケートも終わりだろうと思ったが、まだ続いた。


「家族構成を聞いてよろしいですか?」

家族構成?
家族構成と歯の治療に何の関係があるのかと
疑問に感じたが、質問を返すのもめんどくさいから答えた。

「妹さんは何歳です?」

なんだろう、俺、舌が痛くて、
あまり話をしたくないんですけどと思いながら答えた。

「趣味は何ですか?」

もう、めんどくさい。
もう、アンケートを打ち切ってくれと思いながら、
「ないです」と答えた。
「ないです」と答えれば、
話も膨らまないだろう。

「えっ、趣味ないんですか?映画とか本とか?」

「本は読むの好きです」

話はふくらんだ。

図書館に行きます?」

「最近は行かないっすね」

「私も、本をよく読むんですけど、一回しか読まないって気づいて、図書館に通うようになったんですよ。今は、忙しいので本も読めてないんですけどね」


アンケートじゃないだろ、これ。
アンケートっていうか、世間話だろ?

麻酔が効きはじめるまで世間話は続いた。
あのアンケートは、今後、いかされるのか?





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